エネルギー問題の解決に向け、強誘電体をパワーアップ!

強誘電体の魅力とは?
「強誘電体」は、シリコンのような半導体に比べるとバンドギャップ(電子が存在できない領域)が大きく、絶縁体に近い物質です。また、強誘電体には「光起電力効果」という特徴もあります。光起電力効果とは、物質に光を照射すると電流や電圧が発生する効果のことです。
一般的に太陽電池はn型半導体とp型半導体を接合した構造ですが、強誘電体は光を照射すれば単体で発電ができます。半導体の接合での発電はバンドギャップによる電圧の制約がありますが、強誘電体であれば電圧の制約もなく、半導体の接合の場合に比べて1,000倍を超える電圧を生み出すことも可能です。
強誘電体ならではの課題
ただ、強誘電体ならではの課題もあります。半導体の太陽電池が太陽光に含まれている可視光の波長を効率的に吸収できるのに対して、多くの強誘電体は可視領域の光を吸収できません。そこで、強誘電体に不純物元素を加えることで可視光を吸収できるような工夫を施します。同時に、強誘電体のバンドギャップを狭くして光の吸収を高めるための研究も並行して進められています。
強誘電体のメインは酸化物ですが、それだとバンドギャップを狭くすることは困難です。そのため、非酸化物系の強誘電体を作る研究がなされています。現状は、いろいろな材料の組成、使う元素、結晶の構造を変えていき、バンドの構造や強誘電性が得られるのかを検証している段階です。例えば、すでに太陽電池として実用段階にあるものとして「有機無機ハイブリッドペロブスカイト太陽電池」がありますが、これに使われている材料にさらに強誘電性を持たせて、酸化物の強誘電体よりも効率的に光を吸収できないかが研究されています。
誰も作ったことがない物質を
このように、新しい材料を合成するには多くの時間がかかり、それは強誘電体に限りません。材料研究では、これまで世界で誰も作ったことがない物質を合成して社会の役に立てようと、日々の地道な研究が進められているのです。
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