「テラヘルツ波」の可能性とは? 発振器開発にも期待
次世代の無線通信や先端的分光分析を担う
X線、光、電波はいずれも「電磁波」の一種で、周波数と波長の違いで性質が異なり、呼び方が変わります。Beyond5G、6Gなど、大容量・高速の次世代の無線通信を可能にする、「光と電波の間」の周波数といえる「テラヘルツ波」という電磁波に関する研究が今、盛んに行われています。現在、主に無線通信に使われている電波はギガヘルツ(GHz=10⁹Hz)レベルの周波数ですが、テラヘルツ(THz)はその1000倍、つまり10¹²Hzという単位です。この周波数帯は光と電波の中間領域でもあり、テラヘルツ波は従来の電波とは性質が異なるため、また未利用の電磁波として、その特性や応用の研究が行われているのです。
これまで見られなかったものも見られる光
テラヘルツ波は今まで見られなかった微妙な分子間相互作用の観察に適しているため、「分光分析」の分野にも革新をもたらすと期待されています。分光分析とは、物に光を当てて、それに吸収あるいは反射される光の波長成分(スペクトル)を調べることによって、物質を特定したり状態を観察したりする技術です。テラヘルツ波はX線よりも安全で、かつ、可視光よりも物体の奥のほうまで届く性質を利用し、すでに空港のボディスキャナなどに応用されています。
新たなテラヘルツ波発振器
テラヘルツ波の研究を進めるためには、まずテラヘルツ波を発生させる装置が不可欠です。そこで「光伝導アンテナ」という半導体でできたテラヘルツ波発生素子が開発されました。しかし、テラヘルツ波研究をさらに進めるために、また、より安価で高効率にテラヘルツ波を発生させるための新しい技術が求められています。近年、電子のスピン(自転)に着目した「スピントロニクス」という技術が急速に発展していますが、現在、この「スピントロニクス」を利用した新しいテラヘルツ波発生素子の研究が進んでいます。この技術により、これまでよりも簡単に高い周波数のテラヘルツ波が得られると期待されています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。