プログラム解析で浮かび上がる和歌の新世界
和歌をコンピュータプログラムで解析すると
「デジタル・ヒューマニティーズ」という学問領域では、人文科学系のさまざまな研究課題について、情報科学系の技術を用いて、さらなる知識発見をめざした研究を行っています。例えば和歌の世界には伝統的な表現の「型」があります。型というルールはコンピュータプログラムで解析するのにたいへん相性が良いのです。古典和歌のデータベースと現代のデータサイエンスを組み合わせれば、その文字列解析から思いがけない発見ができます。
表現のもとになった作品を突き止める
和歌研究の真髄は、「本歌取り」の発見です。優れた和歌の一節を使って、新たな作品を創ることを本歌取りといいます。もとになった「本歌」がいつの時代の作品で、そこからどのように表現が受け継がれていったのか、その流れを探究します。三十一文字(みそひともじ)の和歌をすべて仮名文字列に変換し、計算機プログラムによって、ゲノム解析のように、1文字から31文字までのありとあらゆる部分文字列に分解、出現頻度の統計を取っていくと、手作業では事実上不可能だった未発見の本歌を発見することもあるのです。
過去の研究を受け継ぎ、未来へつなぐ
文化研究においては、過去の作品を現代風にアレンジして、もとの作品がわかる人にはわかる、という醍醐味が資源の蓄積につながります。千年の歴史を持つ和歌も、江戸時代には体系的に研究が行われていました。国学者の本居宣長は係り結びなどの法則性をカードに抽出していて、その資料が残されています。現代の国文学研究は、こうした先人の発想や手法を受け継ぎ、コンピュータなど情報科学の技術を利用しながら、脈々と続けられているのです。
学問的動向として文理融合は一般的になりつつありますが、今後、隣接分野どうしの研究もさらに進んでいくでしょう。そうした際にも、個々のデータを比較研究するために、プログラミングの技術は役立つはずです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。