なぜ私たちは当たり前のように言葉を話せるのか?

すべての言葉に共通するしくみ
私たちは、なぜ当たり前のように言葉を話すことができるのでしょうか? こうした根本的な疑問は、長年にわたって研究されてきました。一見すると異なる言葉でも、実は「共通するしくみ」があると考えられています。では、そのしくみとは一体何でしょうか?
普遍的な言葉のしくみを研究する学問は「理論言語学」と呼ばれ、理論言語学者たちはそのしくみを明らかにするため、研究を続けています。動物も鳴き声などでコミュニケーションを取りますが、人間の言葉はそれ以上に複雑です。つまり、言葉は人間にとって不可欠なものであり、そのしくみを探ることは、「人間とは何か?」という根本的な問いに向き合うことでもあるのです。
言葉の「階層構造」
「私はおいしいみかんを食べる」という文を見てみましょう。日本語話者は、この文を「私は」と「おいしいみかんを食べる」 の2つのまとまりに分けて理解します。さらに、後者も「おいしいみかん」と「食べる」に分かれます。このように、文は大きな意味のまとまりの中に、さらに小さな意味のまとまりが含まれている「階層構造」を持っています。
私たちは、言葉を覚えるうちに、このような構造を無意識のうちに理解することができます。そして、その理解に基づいて新しい文を作ったり、ルールに合わない文を「変だ」と感じたりするのです。これは当たり前のように思えますが、誰かに教わるわけでもなく、自然と身についているのは、とても不思議なことです。
言葉のしくみを解明する研究
こうした言葉のしくみについて研究が進めば、脳の中で言葉を作り出すメカニズムが解明されるかもしれません。例えば、翻訳機器やAIの精度が飛躍的に向上するだけでなく、失語症の治療にも役立つ可能性があります。
言葉のしくみにはまだ解明されていないことが多く残されています。しかし、脳の構造からのアプローチや複数の言語を比較する研究など、さまざまな方法でそのしくみを解き明かそうとする研究は今も続いています。
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同志社大学文化情報学部 文化情報学科 准教授星 英仁 先生
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