京都から世界へ ~「職人ネットワーク」が新たな文化をつくる!~
「京都らしさ」の根底には何がある?
「京都らしさ」というと、寺社仏閣、舞妓・芸妓、茶道や華道など、歴史や伝統に関連した多彩なイメージが思い浮かぶでしょう。では、これらの文化の土台を支えてきたのは何でしょうか。京都の老舗企業の経営理念や事業展開などに関する聞き取り調査の結果、「職人」の存在が浮かび上がってきました。古くから京の職人は、実用品をつくる技術性と、芸術品を生み出す作家性を併せ持っています。その職人たちのネットワークが、京都の伝統文化の根底に張り巡らされているのです。
文化を支える「職人ネットワーク」の底力
お寺には仏具や畳などの需要を特権的にまかなう「用達会(ようたつかい)」という組織があり、各分野の職人が協働しながら寺の維持管理を担ってきました。また、茶道の道具は「千家十職(せんけじっそく)」と呼ばれる限定された職人によってつくられてきました。寺や家元は職人を集団として囲い込むことで、格式や質の水準を保持・向上してきたのです。さらに職人は個々に、自分の技や美意識の理解者であり具現者でもある下請けの職人集団を形成しています。互いに信頼感でつながり、切磋琢磨する結びつきが京ならではの文化を開花させたと言えます。
未来を見据え、世界規模で新たな風を吹き込む
ライフスタイルや経済情勢などの変化により、かつての職人集団は分断されつつあります。しかし、職人たちは新たなつながりの創出とものづくりに挑んでいます。例えば、創業400年に及ぶ唐紙工房と創業130年のかばんメーカーは、イギリスでコラボ作品を発表しました。また、西陣織や京金網などの老舗企業がチームとなり、革新的な商品を国内外に発信しています。いずれも、継承してきた伝統と技を礎に、海外マーケットへの展開を図っているのです。これらの実例をヒントに、現代の職人ネットワークが世界規模で機能していけば、京都、ひいては日本がグローバル市場に新たな風を吹き込むことでしょう。
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先生情報 / 大学情報
同志社大学 経済学部 経済学科 教授 西村 卓 先生
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