え、そこ泣くところ? 実は謎だらけの古典文学
古典の世界は実は謎だらけ
「説話集」は、日本の古典文学におけるジャンルの一つで、代表的な作品として平安時代末期に編纂された『今昔物語集』や、鎌倉時代に編纂された『宇治拾遺物語』などが挙げられます。ファンタジーめいた話や怖い話、仏や神と人間との関係を描いた話など、説話集には当時の人々に関するさまざまなエピソードが収録されています。説話集は高校古典の教科書での定番作品として知られていますが、実はその中身がよく読み解けていないものが多くあります。なぜ人々がここで笑い、そしてなぜここで泣いたのかなど、よくわからないことだらけなのです。
1000年前の思いを読み解く
古典文学に登場する人々は、現代とは価値観や考え方が異なる世界に生きています。そのため物語を読んで腑に落ちない部分があっても、古典の人ならしょうがないと、まるで宇宙人のように理解不能な存在として扱われがちです。しかし、そこで思考停止するのではなく、彼らが何に喜び何に悲しんだのか、その心情まで考えながら当時の人たちの感情を読み解こうとする視点が重要です。また古典では今よりも仏や神の存在が身近で、また鬼や天狗が活動する世界と実世界がリンクしています。謎だらけの説話集を解読することで、古典の世界をよりリアルに感じることが可能となります。
古典文学を未来へつなぐ
古典文学研究は今、激動の時代を迎えています。新しい資料が次々と発見され、日々新たな研究成果が生まれているのです。その一方で、日本の各地域に眠る貴重な古典資料が顧みられることなく、どんどんと捨てられてしまっているという現状が課題です。資料を発掘・調査し、その意義を紹介して世の中に広めることは、古典文学研究の未来のためにも重要で、このような活動は、日本古典文学研究者にできる地域貢献、かつ社会貢献でもあります。文化財としての古典籍に光を当てることは、日本の文化を守り、さらには古典文学研究の発展につながります。古典籍の調査と保存・活用は今後ますます重要になることでしょう。
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先生情報 / 大学情報
大正大学 文学部 日本文学科 教授 渡辺 麻里子 先生
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先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?