講義No.12706 日本文学

え、そこ泣くところ? 実は謎だらけの古典文学

え、そこ泣くところ? 実は謎だらけの古典文学

古典の世界は実は謎だらけ

「説話集」は、日本の古典文学におけるジャンルの一つで、代表的な作品として平安時代末期に編纂された『今昔物語集』や、鎌倉時代に編纂された『宇治拾遺物語』などが挙げられます。ファンタジーめいた話や怖い話、仏や神と人間との関係を描いた話など、説話集には当時の人々に関するさまざまなエピソードが収録されています。説話集は高校古典の教科書での定番作品として知られていますが、実はその中身がよく読み解けていないものが多くあります。なぜ人々がここで笑い、そしてなぜここで泣いたのかなど、よくわからないことだらけなのです。

1000年前の思いを読み解く

古典文学に登場する人々は、現代とは価値観や考え方が異なる世界に生きています。そのため物語を読んで腑に落ちない部分があっても、古典の人ならしょうがないと、まるで宇宙人のように理解不能な存在として扱われがちです。しかし、そこで思考停止するのではなく、彼らが何に喜び何に悲しんだのか、その心情まで考えながら当時の人たちの感情を読み解こうとする視点が重要です。また古典では今よりも仏や神の存在が身近で、また鬼や天狗が活動する世界と実世界がリンクしています。謎だらけの説話集を解読することで、古典の世界をよりリアルに感じることが可能となります。

古典文学を未来へつなぐ

古典文学研究は今、激動の時代を迎えています。新しい資料が次々と発見され、日々新たな研究成果が生まれているのです。その一方で、日本の各地域に眠る貴重な古典資料が顧みられることなく、どんどんと捨てられてしまっているという現状が課題です。資料を発掘・調査し、その意義を紹介して世の中に広めることは、古典文学研究の未来のためにも重要で、このような活動は、日本古典文学研究者にできる地域貢献、かつ社会貢献でもあります。文化財としての古典籍に光を当てることは、日本の文化を守り、さらには古典文学研究の発展につながります。古典籍の調査と保存・活用は今後ますます重要になることでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

大正大学 文学部 日本文学科 教授 渡辺 麻里子 先生

大正大学 文学部 日本文学科 教授 渡辺 麻里子 先生

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日本古典文学

先生が目指すSDGs

メッセージ

日本の古典文学と聞くと、自分とは遠い存在だと感じることもあるかもしれません。しかし古典の世界の人々は、時代の制約ゆえに今とは少し異なる面こそあるものの、あなたと同じように嬉しいことには喜び、悲しいことには涙を流してと、悩みながらも一生懸命に生きていました。今とは少し違う言葉や文法で書かれた古文を勉強し、古典の世界をリアルに読み解いてみませんか? また令和の今、まだこの世の中には古典資料がたくさん眠っています。ぜひ本学で古典資料を発掘しながら古典文学を一緒に楽しく学びましょう。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大正大学に関心を持ったあなたは

大正大学は大正15(1926)年に設立された、2026年に100周年を迎える伝統のある大学です。6学部10学科の学問分野で文学や心理、歴史、メディアなど、多彩な学びを展開し、地域社会に貢献できる人材を目指します。キャンパスは東京都豊島区にあり、池袋・巣鴨からもアクセスしやすい立地です。全学部が4年間を同じキャンパスで過ごします。また、1学年約1200名の学生に対し、教員は154名。教員1人あたりの1学年の学生数が7.8名と、教員との距離が非常に近いことも特徴です。