言葉を通じて異文化を旅する「ファンタジーの世界」
対象読者もジャンルも幅広い、英米の児童文学
「児童文学」と聞いたとき、あなたはどんな作品を思い浮かべるでしょうか? すぐに絵本やアニメが思い浮かぶ人もいるでしょう。一口に児童文学といっても、対象とする読者の年齢層は驚くほど幅広いのです。英米の児童文学の場合、対象は子どもに限られているわけではなく、それぞれの作品に出てくる語彙(ごい)群が理解できる年齢以上のすべての人が読者なのです。そのため大人になっても楽しめる作品がたくさんあります。絵本、マンガ、ファンタジー、学園もの、伝記、歴史ものなど、さまざまなジャンルの作品があることも英米児童文学の特徴です。
緻密なプロットが光る『ハリー・ポッター』
英米児童文学の中で最もよく知られているジャンルが、ファンタジーです。『ナルニア国物語』や『ロード・オブ・ザ・リング』は、しっかりと別世界が構築された壮大な叙事詩とも言える作品で、「ハイ・ファンタジー」と呼ばれます。一方、『クマのプーさん』や『チャーリーとチョコレート工場』などは「ライト・ファンタジー」と呼ばれています。
大ベストセラーとなった『ハリー・ポッター』シリーズも、イギリスの児童文学の一つです。多くの謎が生まれ、解き明かされながら、数々の伏線によって物語の世界がクライマックスに到達します。その緻密なプロット(筋書き・構想)と魅力あふれる物語の舞台によって、『ハリー・ポッター』は今も世界中の人々を魅了してやみません。
異文化への入り口として
こうした児童文学作品は比較的わかりやすい英語で書かれているので、日本人にも読みやすく、語学力を磨く教材として有効です。原書を読むことは異文化をより深く知るための最適な入り口であり、この点でも児童文学は魅力的です。さらに、英米の絵本には、絵の構成、絵と文字の構図、ページをめくる行為が果たす役割まで考え抜かれた優れた作品が数多くあります。だからこそ、英米の児童文学を研究することによって、言語や文化、そして人間への理解を深めることができるのです。
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先生情報 / 大学情報
清泉女子大学 総合文化学部 ※2025年4月開設 総合文化学科(国際文化領域) 教授 笹田 裕子 先生
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