テレビを観るように、イギリスの詩を読もう!

テレビを観るように、イギリスの詩を読もう!

初期近代の詩は現代のテレビと同じ

ルネサンス以降の初期近代、16世紀から18世紀にかけてのイギリスについては、文学、特に詩を見れば社会の様子がよくわかります。詩というと恋愛詩などをイメージするかもしれませんが、詩は高尚な芸術表現というよりも、今でいえばテレビのような、時代を背景とする一般的なメディアでした。主題も現代のテレビと同じで教養から娯楽まで何でもありました。社会的な議論や論争などもしばしば詩で行われていたのです。

劣等感をバネに成長したイギリス

初期近代までのヨーロッパ文化の中心はイタリアやフランスでした。英文学史上最大の叙事詩と言われる『失楽園』を書いたミルトンは、「イギリスは北の外れにあって寒いから、オレンジやオリーブが育たないし、人間の頭も育たない」と自虐的に語っています。ですが、そんな劣等感ゆえに海外からいろいろな文化を貪欲に取り入れ、やがてヨーロッパをリードする存在となっていきました。文化的な劣等感をバネに成長するという歴史は、明治維新以降の日本の歴史とどこか重なります。

なぜルネサンスで古典が復興?

16世紀以降のイギリス詩は、外国文学、特にギリシャ・ローマの古典や神話を扱うことが多くなります。当時は宗教改革の真っ只中で、キリスト教がよりまじめで厳しいものとなりつつありました。そんな厳格な文化・道徳に対する抵抗として、イギリスの詩人たちは聖書と同等あるいはそれ以上に古くて権威あるギリシャ・ローマ古典を用いたのです。例えば聖書の十戒は、「姦淫(かんいん)してはいけない」、「人を殺していけない」、などとある意味あたりまえな道徳を語ります。これに対して古典は不倫の恋愛や殺人を描きます。現代の映画・小説・ドラマのように、古典は刺激的な物語を提供していたのです。シェイクスピアが登場したのは、まさにそんな時代でした。

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フェリス女学院大学 文学部 英語英米文学科 教授 冨樫 剛 先生

フェリス女学院大学 文学部 英語英米文学科 教授 冨樫 剛 先生

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英米文学、文化学

メッセージ

「思いやりを持ち、相手のことを考えましょう」と言われますが、その「相手」の範囲をどこに設定するかで、個人や社会のあり方は変わってきます。
相手としては、家族や恋人、学校の仲間や友だちなど、いろいろな集団があります。さらには自分からは遠い地域の人たち、50年後、100年後の人たちもいます。こうした人たちのことを考えて、「思いやり」の範囲を広げていける人になりましょう。そのために、英語の詩などを通して、過去の、また異文化の人に対する共感や理解を深め、現代についてより深く考える力を育んでください。

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