体の外に出した血液が固まらないように観察する新システム

固まってしまう血を固まらないように
けがなどでの出血は、よほど大量でない限り、いずれ固まって止まります。治療や手術では、チューブを通して血液を体外に出す必要に迫られる場合も少なくありませんが、そのときに血液が固まってしまっては困ります。そこで現状は、血液が固まらない薬を用いて手術を行っています。ただ、この薬を使う場合、手術中は継続してチューブ内の血液を観察し、問題がないか確認しなければなりません。病院では目視と血液の状態を見る専用の機器を使って対応していますが、先頃、チューブ内を流れる血液の状態をその場で、リアルタイムに知ることができる新しいシステムの基礎原理が開発されました。
医療従事者、患者双方の負担を軽減
このシステムは光の反射を利用して、目視では判断できない血液の色の違いやその固まり具合を検出し、数値として示します。これまではいったんチューブから血液を抽出して専用の機器で計測する必要があり、どうしてもタイムラグが出てしまっていました。それを解消するのが、今回開発されたシステムです。これは、手術時間の短縮、医療従事者の負担軽減や患者の安全性を確保するといった大きな効果が期待できます。
医療現場への導入を
今後はこの新システムの機構をさらに向上させつつ、医療現場への導入が目標とされています。また応用研究として、同様の効果を得るのに、光以外の磁気や超音波などの物理エネルギーを活用できないかが探究されていく予定です。何かの理由で光を使ったシステムが利用できない場合に、別の選択肢があると融通が利きます。また、そうした物理エネルギーを利用したシステムには、光を利用したときとは異なるメリットが生まれる可能性も考えられます。
透析や心臓手術時に活用する人工心肺装置など、「血液を体外に出す」状況を作って治療を行う場面は意外に多く、これら技術が進歩すれば、医療現場の環境が大きく変わると考えられています。
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