講義No.12719 看護学

集中治療室で起こりがちな記憶のゆがみを予防するには

集中治療室で起こりがちな記憶のゆがみを予防するには

短いけれど重要な時間

集中治療室(ICU)では、患者の命を救おうと短期間でさまざまな治療を施しています。患者の人生にとっては、一瞬のような出来事かもしれません。しかしその短い時間にICUで受けた治療や看護が、患者のその後の人生を左右する場合があります。集中治療室で働く看護師は、患者の人生全体を見据えて、心身共に健やかな人生を歩んでもらうためによりよい支援をめざしています。

患者に起こる記憶のゆがみ

例えばICUという非日常の環境に置かれることで、患者の記憶にゆがみが生じる場合があります。幻覚が見えたり、何が現実かわからなくなってしまったりといった症状が、ICUを出た後も続いてしまうのです。現実と幻覚とを判別できないままだと、家族と話も合いづらくなります。家族が「ICUでこんなことがあったよね」と話しかけても患者自身は覚えていなかったり、患者が幻覚を現実だと思い込んでおり周囲と認識が食い違ったりといった事例が見られます。その結果、ささいなことからケンカになるなど、家族との関係性が悪化してしまう場合もあります。

鎮静薬を使わない治療

ICUでは患者の苦痛を緩和するために、鎮静薬で眠ってから治療を行うことが主流でした。しかし研究によって、患者の意識を保ったまま治療を行うほうが記憶のゆがみを予防できそうだとわかってきました。長時間意識のない状態が続くと、知らないことが増え、現状認識が追いつかなくなったり、現実と幻覚の区別が付きにくくなります。そこで鎮静薬をなるべく使わず、鎮痛薬で過剰な痛みだけを取り除いて行う治療が始まりました。
意識を保ったまま治療を進めることは、記憶のゆがみを予防する以外にも効果があると考えられます。起きている間に可能な範囲で身体を動かすと、「自分にもできることがある」と患者が感じやすくなるのです。気持ちが前向きになれば、心身共に回復が早まるかもしれず、ICUでの実践も交えながら、効果の検証が行われています。

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先生情報 / 大学情報

武蔵野大学 看護学部 看護学科 准教授 福田 友秀 先生

武蔵野大学 看護学部 看護学科 准教授 福田 友秀 先生

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看護学

先生が目指すSDGs

メッセージ

勉強はもちろん大事ですが、周囲の人とのコミュニケーションも大切にしてほしいです。人の気持ちがわかる看護師は、患者からも信頼されます。友達と話をする、家族や遠い親戚ともコミュニケーションをとる、といった経験を積んでおくと、きっと役に立ちます。また、さまざまな場所の景色を見ることも心を豊かにしてくれると思います。恋愛やアルバイトなどの経験でもかまいません。いいことも悪いこともかみしめて自分なりに解釈すると、あなたの引き出しが増え、多角的に物事を見られるようになるはずです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

武蔵野大学に関心を持ったあなたは

2024年に100周年を迎えた武蔵野大学は、同年4月、ウェルビーイング学部ウェルビーイング学科を新設しました。2023年4月には、社会と環境をデザインし実現する、文理融合型の「サステナビリティ学科」を開設し、近年では、起業家精神を育成する「アントレプレナーシップ学科」や私立大学初の「データサイエンス学科」を新設。常に時代の変化を先取りし、13学部21学科の文・理・医療・情報系の総合大学へと発展・拡大を続けています。