小児がんの子どもたちに必要な、「医療以外の支援」

心身に影響し続ける、過酷な治療
0歳から15歳の子どもがかかるがんの総称「小児がん」は、命に関わる希少な病気ですが、近年は生存率が高くなり、その後の人生を長く生きられるようになってきています。しかし、成人のがんとは治療方法も異なり、治療が終わった後に、晩期合併症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)など、心身にさまざまな症状が出てくることがあります。また長期の入院となるため、学力不足や場合によっては高校への入り直しなども必要になります。治療後も、進学や就職、医療費の負担などのさまざまな生活課題が発生している現状があります。
生活者としての声を拾い上げる
公的な支援が少ない中、国の対策として2013年「小児がん拠点病院」が全国に15カ所設置され、治療だけでなく、小児がん専門の相談員が配置されました。主にソーシャルワーカーが担っており、生活上の困難や悩みを持っている本人や家族に関わり、課題解決できるように寄り添います。ソーシャルワーカーは個々の支援だけでなく、生活者としての当事者の声やニーズを拾い上げ課題を分析し、実態の周知や支援体制の充実につなげていくための実践も行っています。
「一人じゃない」と思える仲間の存在
小児がんを経験した人への調査では、「入院中から仲間に会いたかった」という声が多く聞かれ、つらく苦しい状況の中で、仲間と支え合うこと(ピアサポート)が重要であることがわかってきています。同じような病気をした人と交流することで、「一人じゃない」と気づき、それぞれの人生を前向きに考え始めるきっかけになることもあります。院内学級(病院の中の学校)などの教育の場も「交流の場」として機能していますが、退院後のつながりを持つのは困難です。すでに成人のがんでは進んでいるピアサポートを、今後は小児がん支援の一つとして、ピアサポートできる場所や機会をつくることを考えていく必要があります。
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武蔵野大学人間科学部 社会福祉学科 教授小俣 智子 先生
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