データサイエンスがいざなう新しい美術館のかたち
データサイエンスで社会に何ができるかを考える
近年「データサイエンス」という言葉をよく耳にするようになりました。データサイエンスの概念自体は以前からあるもので、大量のデータ分析から何らかの法則性や関連性を導きだす学問全般をさす言葉です。しかし、そこで培った知識や導き出された情報を社会に正しく還元できて初めて、人々を幸せにできると言えるでしょう。データサイエンスの研究は私たちの生活にどんなことができるのか、難しい言葉で言えば「社会実装」の重要性が高まっています。
ITを活用した新しい美術館
データサイエンスを社会実装する一例として、美術館システムの再構築について紹介します。これは多くの人が持っているIT機器であるスマートフォンを利用して、これまでにない美術館体験を実現するための試みです。これまで展示作品の音声案内は専用機器の貸し出しが必要でしたが、専用のスマートフォンアプリを使うことで美術館にいるときは声優の声で、それ以外の場所では機械音声で展示作品の案内が楽しめるようになりました。ここには、デジタル化された収蔵品のデータを位置情報などと連携してどう活用するかといった、データサイエンスの理論や技術がふんだんに用いられています。
夢を実現する手段として
もちろん、美術館のアプリはあくまで社会実装の一例です。重要なことは、美術館を新しい技術の実験場にすることで、人々が楽しむアートを通じてデータサイエンスの進歩や可能性を社会に示したことです。今後は、さまざまな美術館でデジタル化されたアート作品のデータを集め、過去の展示をいつでも再体験できたり、会場に行くことができない遠隔地の人にもバーチャル美術館めぐりで展示を体験できたりするようになっていきます。これはまさに、データサイエンスを使ったタイムマシン「どこでもドア」になります。データサイエンスは多くの人々の夢をかなえるための研究でもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
武蔵野大学 データサイエンス学部 データサイエンス学科 教授 石橋 直樹 先生
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