建築は人の暮らしに寄り添う文化である
レオナルド・ダ・ヴィンチは優れた建築家
中世ヨーロッパでは、建築は総合芸術のひとつでした。画家・発明家で知られるレオナルド・ダ・ヴィンチは優れた建築家でもあります。そう考えると、建築は単なる技術ではなく人々の暮らしを形作る文化であることがわかります。建築というと構造やデザインに目が行きがちですが、エンジニアリング的アプローチだけでなく、住む人、造り手、そして社会や歴史文化にも配慮したものづくりが建築には求められます。
福島の復興公営住宅プロジェクト
建築には、「なぜ必要か」「何が必要か」という思想があり、生み出される空間があり、造る技術者や職人がいて、住む人がいる。またその建物が形成する街並みや都市のデザインまで考える総合的なアプローチが必要です。
それを踏まえた事例として、木造建築による「いわきCLT復興公営住宅」の計画があります。ここで用いられた構造は、CLTと呼ばれる木を使った大型のパネル工法で、従来の木造建築では難しい大規模な建造物が可能です。そこでは、建物自体の耐久性や設計デザインなど住み手側のメリットはもちろん、集合住宅として人と人とのつながりを大切にする、コミュニティとしての住まいの役割が重視されました。また、建設現場で作業工程にかかる時間を測ることで、建設作業員の労働環境の改善ができるかほかの工法と比較し、高い効果が見られました。完成した復興住宅は、里山の環境になじむ木の風合いが美しく、そこで新たに生まれるコミュニティやまちづくりのベースとなっています。
人の暮らしをデザインすること
文化として建築を学ぶことは、都市計画やまちのあり方を考え、人に寄り添い自然と共存する暮らしづくりへとつながっていきます。その中に構造や素材の開発、建物性能の向上などのエンジニアリングがあり、現場で働く技術者の育成や環境改善があり、さらに大元をたどれば材料となる木を生み出す森づくりにも目を向ける必要があります。
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追手門学院大学 文学部 人文学科 美学・建築文化専攻 准教授 青島 啓太 先生
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