東南アジアの政治から見えてくる、日本の立ち位置と進むべき未来

東南アジアの政治から見えてくる、日本の立ち位置と進むべき未来

南北問題

途上国と先進国の間に大きな格差が生じている問題を「南北問題」といいます。北半球に経済的に豊かな国が、南半球に貧しい国が多くあることがその語源です。しかし、現在はグローバル化が進み、一部の途上国も経済成長を遂げ、国内の経済格差が拡大しています。
東南アジアでは、その経済格差が原因で政治がなかなか安定しない国があります。例えば、タイは議会制民主主義へと移行しつつありますが、選挙では権力を維持できない伝統的エリートである国王・国軍派が一部富裕層の支持を得て、選挙による政府へのクーデターを繰り返しています。

東南アジア各国の政治

他方、ミャンマーでは、50年以上軍事独裁政権が続いています。ミャンマーは、2011年以降、民主化の道を歩み始めるかに見えましたが、2021年に国軍がクーデターを起こし、内戦状態になりつつあります。
内陸国であるラオスは社会主義国家であり、東南アジアの中でも特に貧しい国です。近年は中国によるインフラ建設への投資や融資の支援を受けており、中国とラオスを結ぶ高速鉄道が6000億円以上の巨額の費用により建設されました。

見えてくる日本の姿

中国のラオスに対する支援は、中国が進める「一帯一路」構想の一環です。一帯一路とは、中国とアジア・中東・ヨーロッパなどを陸路と海路でつなぎ、貿易や経済を活性化させようという中国の巨大プロジェクトです。一帯一路を機に、東南アジア諸国において中国の存在感は高まる一方です。片や、かつて世界でトップレベルの経済力をもち、東南アジアにも大きな影響力をもっていた日本は、30年に渡る経済の低迷によって存在感が弱まるばかりです。
東南アジア各国の政治や国際情勢を研究することは、日本が東南アジアといかなる関係を結ぶべきかを問うために重要です。例えば、ミャンマーの政治研究は、ミャンマーの軍事独裁政権への日本政府の援助(ODA)を継続すべきか否かの判断にとって不可欠です。

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武蔵野大学 法学部 政治学科 教授 髙橋 正樹 先生

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政治学、国際政治学

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メッセージ

現在の高校生が社会人になる頃には、世界の変化はより激しくなり、どのような世の中になっているのか予測がつきません。そんな状況で自分がどう生きるかを判断するためには、学ぶべきことはとても多く、また学び続ける姿勢も求められます。そのためには、大学での学びを通して、さらに経験を通して「自分の地元」「東京や大都市といった地元以外の地域」「海外」という視点をもちましょう。この3つの視点によってものごとが立体的に見え、変化をとらえ、対応する力も身につきやすくなると思います。

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2024年に100周年を迎えた武蔵野大学は、同年4月、ウェルビーイング学部ウェルビーイング学科を新設しました。2023年4月には、社会と環境をデザインし実現する、文理融合型の「サステナビリティ学科」を開設し、近年では、起業家精神を育成する「アントレプレナーシップ学科」や私立大学初の「データサイエンス学科」を新設。常に時代の変化を先取りし、13学部21学科の文・理・医療・情報系の総合大学へと発展・拡大を続けています。