神経変性症という難病を治す、治療薬のつくり方とは?
遺伝子が原因となる神経の病気
神経の病気である神経変性症は遺伝子の異常が原因の病気です。病気によって異常化した遺伝子自体を治すことは困難です。しかし、病気の進行を抑えることはできます。病気は、異常化した遺伝子からできた異常なタンパク質が、その周辺にある正常なタンパク質を侵食し、おかしくしてしまうことで進行します。それを薬で食い止めることで、病気の進行を抑えることができるのです。
さまざまな神経変性症
神経変性症には、小児が発症するCMT(シャルコー・マリー・トゥース病)やPMD(ペリツェウス・メルツバッハー病)といった難病があります。CMTは手足の感覚や痛みを感じなくなったり、体が震えだしたりする病気です。PMDは脳神経の病気で、乳幼児期に発症し、脳の中核となる信号がなくなってしまいます。筋肉も発達せず、自分で息をしたり立ったりすることができなくなり、ひどい場合だと首が据わりません。最終的には脳が溶けるような表現形も認められます。今のところ、完全な治療薬はありませんが、神経の壊れ方など、病気の全貌(ぜんぼう)が徐々にわかってきています。
神経変性症の治療薬のつくり方
治療薬の開発では、まず、病態を模倣するような神経組織を人工的につくります。そこにいろいろな薬をかけて、分子標的を見つけ出すのです。分子標的とは、薬の標的となる分子のことで、この場合は、異常なタンパク質分子です。分子標的がわかれば、異常なタンパク質が正常なタンパク質を侵食しないよう、ブロックするような薬を考えていきます。薬は化合物や低分子など、さまざまなものが考えられます。
ただし、マウス実験では成功しても、人体でも有効か、また、人体に危険がないかはわかりません。そこでiPS細胞などを利用して、より人の病態に近い神経組織をつくる試みがなされています。有効な薬が開発されれば、CMTやPMDといった難病で命を落とす子どもたちを救うことができるのです。
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東京薬科大学 生命科学部 分子生命科学科 教授 山内 淳司 先生
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