講義No.05991 数学 物理学

コーヒーカップとドーナツは同じ形? 「トポロジー」で考える世界

コーヒーカップとドーナツは同じ形? 「トポロジー」で考える世界

最も素朴で本質的な側面を考える研究

「トポロジー」は日本語で「位相幾何学」と呼ばれ、幾何学の中でも、最も素朴で本質的な側面を研究する学問と言われています。トポロジーの歴史は比較的新しく、18世紀の数学者レオンハルト・オイラーの頃にさかのぼります。オイラーは、川の中の2つの島と両岸との間にかかる7つの橋を1回ずつ渡って回ることはできるかどうかを考察した「ケーニヒスベルクの橋」という問題や、穴の開いていない多面体において「頂点の数-辺の数+面の数=2」という「オイラーの多面体定理」が成り立つことなどを発見したことで知られています。

ぐにゃぐにゃ変形しても変わらない性質とは?

トポロジーとは、簡単に言うと、「図形をぐにゃぐにゃ変形しても変わらない性質」を追究するものだと言えるでしょう。正四面体も、正六面体も、球も、本質的に同じものだとトポロジーでは考えます。一方、例えばビーチボールと浮き輪は、穴の有無によって本質的に異なるものだととらえます。ビーチボールをどんなにぐにゃぐにゃ変形しても、穴の開いた浮き輪のような形にはできないからです。
トポロジーの考え方の例としてよく挙げられるのが、取っ手のついたコーヒーカップとドーナツです。一見、似て非なるものに思えますが、取っ手の部分に穴のあるコーヒーカップの形は、連続的に変形していけばドーナツの形にすることができます。トポロジーの考え方では、コーヒーカップとドーナツは「同じもの」なのです。

今後もユニークな発見が期待される分野

トポロジーの世界では、ひもの結び目を数学的にとらえて研究する「結び目理論」など、さまざまな分野の研究が世界各国で続けられています。物理学・生命科学など多様な分野との関わりの中で、新しい研究テーマが次々と生まれているこれらの分野では、これからもユニークな発見が数多くなされていくことでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東京都立大学 理学部 数理科学科 教授 横田 佳之 先生

東京都立大学 理学部 数理科学科 教授 横田 佳之 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

位相幾何学

メッセージ

トポロジーとは、夏の海辺で見かけるビーチボールと浮き輪を間違える子どもが世の中にいない事実の背景にある、図形をぐにゃぐにゃ変形させても変わらない本質的な性質を研究する幾何学です。数学の世界では比較的若い研究分野ですが、非常に活気のある分野で、新しい研究テーマも次々に生まれており、日本人の研究者も多数活躍しています。あなたもぜひ、トポロジーの世界を体験してみてください。

東京都立大学に関心を持ったあなたは

東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。