コーヒーカップとドーナツは同じ形? 「トポロジー」で考える世界
最も素朴で本質的な側面を考える研究
「トポロジー」は日本語で「位相幾何学」と呼ばれ、幾何学の中でも、最も素朴で本質的な側面を研究する学問と言われています。トポロジーの歴史は比較的新しく、18世紀の数学者レオンハルト・オイラーの頃にさかのぼります。オイラーは、川の中の2つの島と両岸との間にかかる7つの橋を1回ずつ渡って回ることはできるかどうかを考察した「ケーニヒスベルクの橋」という問題や、穴の開いていない多面体において「頂点の数-辺の数+面の数=2」という「オイラーの多面体定理」が成り立つことなどを発見したことで知られています。
ぐにゃぐにゃ変形しても変わらない性質とは?
トポロジーとは、簡単に言うと、「図形をぐにゃぐにゃ変形しても変わらない性質」を追究するものだと言えるでしょう。正四面体も、正六面体も、球も、本質的に同じものだとトポロジーでは考えます。一方、例えばビーチボールと浮き輪は、穴の有無によって本質的に異なるものだととらえます。ビーチボールをどんなにぐにゃぐにゃ変形しても、穴の開いた浮き輪のような形にはできないからです。
トポロジーの考え方の例としてよく挙げられるのが、取っ手のついたコーヒーカップとドーナツです。一見、似て非なるものに思えますが、取っ手の部分に穴のあるコーヒーカップの形は、連続的に変形していけばドーナツの形にすることができます。トポロジーの考え方では、コーヒーカップとドーナツは「同じもの」なのです。
今後もユニークな発見が期待される分野
トポロジーの世界では、ひもの結び目を数学的にとらえて研究する「結び目理論」など、さまざまな分野の研究が世界各国で続けられています。物理学・生命科学など多様な分野との関わりの中で、新しい研究テーマが次々と生まれているこれらの分野では、これからもユニークな発見が数多くなされていくことでしょう。
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