すべての人が楽しめる本を~ユニバーサルデザイン絵本~
障がいのある子もない子も楽しめる絵本
目の不自由な人のための情報としては、点訳本がよく知られています。しかし、点訳本は点字を読める人しか利用できません。みんなで絵本を楽しみたい子どもたちのために考えられたのが、「バリアフリー絵本」「ユニバーサルデザイン絵本」と呼ばれるものです。
絵と文字が印刷された通常の絵本に、点字や絵の輪郭がわかる凹凸が添えられたものや、最近では、指でこすると果物の匂いがでるように香料を閉じ込めたインクを使っている絵本もあります。見えるけれども視力が弱いという子のために色のコントラストをはっきりさせた絵本、手触りを楽しむ布絵本、手話がついた絵本もあります。
このような絵本があれば、目の不自由な子でも、きょうだいや友だちと一緒に楽しむことができるのです。
知的障がいのある人には「やさしく読める」本を
知的障がい、学習障がいのある人たちもまた、読書において別の困難があります。大人になって絵本には関心が持てなくなったものの、大人向け図書の文章の理解が難しいケースです。そこで今、注目されているのが「LLブック」です。LLとはスウェーデン語の「やさしく読める」という言葉の略で、仕事や生活、社会を題材にした大人向けの内容を、写真やピクトグラム(絵文字)を多用し、平易な言葉で表現してあります。LLブックは北欧を中心に普及が始まっており、日本でも出版されています。LLブックもまたユニバーサルデザイン絵本の一種といえます。
積極的な啓発活動が普及の課題
バリアフリー絵本やLLブックは、まだまだ出版点数が少なく価格も高いため、普及しにくいのが現状です。また、書店に置いてあったとしても、手に取った人はどのように利用したらいいのかわからないことがほとんどでしょう。公共図書館の予算も限られていますが、「すべての人が図書を利用できるように」という公共図書館の理念を考えると、ユニバーサルデザイン絵本を収蔵して積極的に紹介し、出版社や一般市民の理解を得ていくことも、今後の課題といえます。
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先生情報 / 大学情報
静岡文化芸術大学 文化政策学部 文化政策学科 教授 林 左和子 先生
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