レジリエンス理論-困難に対する「心の回復力」を探究する

レジリエンス理論-困難に対する「心の回復力」を探究する

社会心理学とは

社会心理学は、個人や集団が社会にどのように影響を受けているかについて研究する学問です。例えば、大学生を対象にユーモア(笑い)の使い方が情動に与える影響について研究されています。また、中高生のスマホ依存の問題、SNSの使用が人間関係や精神的健康に与える影響に関する研究などがあります。それらの研究は、個々の発達段階における心理的な特徴や問題を理解して、支援や課題解決に役立てることができます。

心の回復力を研究

研究テーマの一つに、困難や逆境に対する精神的な回復力に焦点を当てて、個人の心理的な耐性を研究する「レジリエンス理論」があります。レジリエンス(resilience)とは、「回復力」や「復元力」などと訳される言葉です。このテーマの重要性は、社会や家庭、教育において心理的な支援が必要となるような場面で「どのように人が立ち直るか」を明らかにできる点で、環境的要因や遺伝的な背景がレジリエンスに与える影響が研究されています。現代の心理学における新たなアプローチの一つとして、特に思春期や青年期におけるレジリエンスが注目されており、心理学だけでなく、社会学、教育学などの分野と重なりながら研究が進められています。

データサイエンスとしての側面

「レジリエンス理論」は、主にアンケート調査が用いられています。質問項目には、「問題があったとき、すぐに立ち直る方だと思うか?」「嫌なことがあったとき、どのように対処するか?」といった内容が含まれます。心理学にはデータサイエンスの側面もあり、こうして集まった回答は表計算ソフトを使うなどして統計的な分析を行います。これにより、レジリエンスが高い人と低い人との違いや、その後の回復力の差異が明確になりつつあります。例えば、自己概念がポジティブな人ほどレジリエンスが高く、困難に対してより柔軟に対応できるという結果が得られました。
こうした研究は、精神的な健康維持や心理教育、災害などの心理的な支援策の改善に役立つと期待されています。

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先生情報 / 大学情報

熊本大学 共創学環(仮称) ※2026年4月開設予定(設置構想中)  准教授 西川 里織 先生

熊本大学共創学環(仮称) ※2026年4月開設予定(設置構想中) 准教授西川 里織 先生

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先生が目指すSDGs

メッセージ

社会心理学を学ぶ醍醐味(だいごみ)は、人間の心が、社会や他者にどのように影響を受けるかを理解できることにあります。日常的にニュースを見たりラジオを聞いたりして、世界で何が起こっているのか、なぜこんな問題が発生しているのかに心を寄せてください。高校時代は与えられた勉強をすることが多いと思いますが、大学に進む前に、社会の課題に対して「知りたい」という気持ちを持ってほしいです。それらの課題が、心理学の学びにどうつながるのかを考えてみましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

熊本大学に関心を持ったあなたは

熊本大学は、「総合大学として、知の創造、継承、発展に努め、知的、道徳的、及び応用的能力を備えた人材を育成することにより、地域と国際社会に貢献する」という理念に基づき、地域のリーダーとしての役目を果たしています。かつ、世界に向け様々な情報を発信しながら、世界の学術研究拠点、グローバルなアカデミックハブとして、その存在感を高める努力をし、教育においては、累計30件にも及ぶ「特色ある教育プログラム」が優れた取り組みとして文部科学省から認定され、その教育力の高さと質の高い教育内容は定評のあるところです。