「生きがい」は介護予防の効果薬

「生きがい」は介護予防の効果薬

介護になる手前

超高齢社会である日本では、介護を必要とする人口の増加を防ぐことが待ったなしの課題です。高齢者で、介護の状態には至っていないものの、心身が衰えた状態を「フレイル」と呼びます。対策を打たないと、そのうち約7割は状態が悪化して介護が必要になるという統計があり、介護人口の抑制にはフレイルの段階で何らかの介入が必要です。

フレイルと生きがい

フレイルの診断基準は、体重減少、主観的疲労感、日常生活活動量の減少、歩行速度の低下、握力の低下の5つです。フレイルに陥る要因は、加齢や病気だけでなく、普段の生活も大きく影響します。そのことから、「生きがい」とフレイルとの関係性の調査が行われました。まず、「生きがい」の定義を、現状の人生に満足して未来に前向きであり、社会にも必要とされていることと定め、高齢者を対象に15項目ほどのアンケート調査を実施します。また、フレイルを身体的、認知的、社会的の3つに分類します。身体的フレイルは、体の調子が弱った状態。認知的フレイルは、脳の機能が弱った状態。社会的フレイルは、社会とのつながりが弱った状態です。それぞれの相関を調べると、2つ以上のフレイルに該当する人は、「生きがい」が低い傾向にあることがわかりました。さらに、「生きがい」が低い人の生活の活動量は、「生きがい」が高い人よりも少ないことが判明しています。

生活活動を上げる

この調査により、生活の活動量を上げることが「生きがい」につながり、介護予防になると考えられます。それも、洗濯や皿洗いのような比較的穏やかな活動よりも、掃除や階段の上り下りのような、少し息が弾む程度の生活活動が効果的と分析されました。例えば、高齢者施設で入居者にモップ掃除などの役割を担ってもらうことで、生活活動量を上げ、社会で必要とされている「生きがい」を感じることができるかもしれません。いつまでも「生きがい」を持って暮らせる環境をつくることが、超高齢社会のこれからにますます重要となるのです。

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神戸国際大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 助教 辻下 聡馬 先生

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リハビリテーション学、理学療法学

先生が目指すSDGs

メッセージ

以前、理学療法士をしていた時に、同じ疾患を治療したのに、退院する人と、そのまま入院を続ける人がいるのを疑問に思ったことが現在の研究のきっかけになりました。理学療法士には知識や技術が重要ですが、忘れてはならないのは、目の前の患者さんをしっかりと見て、耳をすまし、一生懸命に取り組む姿勢です。理学療法士でなくても、今やっていることに一生懸命向き合うことが大切なのは変わりません。何事に対してもそうすることで疑問点が浮かび、それが学問へとつながっていくのではないでしょうか。

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神戸国際大学は経済学部(経済経営学科、国際文化ビジネス・観光学科)とリハビリテーション学部(理学療法学科)の2学部3学科の大学です。少人数制の学びが特徴で、教員との距離も近くきめ細かな指導を受けることが出来ます。
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