うまく食べられない人のリハビリも「言語聴覚士」の仕事
嚥下(えんげ)障害の症状とは
飲み込む(嚥下)機能に障害があると、口に入れたものをうまくのみ込むことができないため、喉(のど)に残った食べ物や、水のようなさらさらしたものが、食道ではなく気管に入ってむせたり(誤嚥)、詰まったり(窒息)します。最悪の場合は、食べ物や唾液が気管から肺に入り細菌が繁殖して、誤嚥性肺炎で亡くなる場合もあります。
原因はさまざまです。喉の筋力低下や老化で舌が後ろに引っ込んだり、喉仏が下がったりするといった器官の位置変化が原因の場合もあります。また、脳卒中などの脳血管障害で脳の命令がうまく伝わらないこともあります。外科手術後にこのような症状がでることもあります。
いかにリハビリを行うか
患者さんの症状に応じてリハビリを行います。1つ目は筋力強化ですが、効果が表れるまでに時間がかかります。2つ目は、食べ物の工夫です。口に入れる1回の分量を減らしたり、水のようなものはすぐに体内で落下しないようにとろみを付けたりします。また、舌には咀嚼(そしゃく)でバラバラになった食べ物をまとめる機能がありますが、それができない場合は食べ物をゼリー状などまとまりやすい形にします。3つ目は飲み方や飲む時の姿勢の工夫です。飲み込むときに舌や喉に力を入れたり、飲み込んだ後に喉に食べ物が残らないように空飲み込みを追加してもらったりします。あるいは、飲食物が気管に入りにくいように、軽くあごを引いてうなずくような姿勢で飲み込んでもらいます。ほかにも、脳卒中などで喉の感覚が弱くなった人へのリハビリも行ったり、家族の方に介助方法を指導したりもします。
幅広い方を対象とする言語聴覚士
このような食べるためのリハビリを行うのは、言語聴覚士です。また言語聴覚士は、難聴の方や記憶・計算がうまくできない高次脳機能障がいの方、失語症、発達障がい、吃音の方などうまくコミュニケーションがとれない方々のリハビリも行います。このように、言語聴覚士は、幅広い人を対象とする仕事なのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科 コミュニケーション障害学コース 教授 矢守 麻奈 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
コミュニケーション障害、言語聴覚障害学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?