人生を意味づけて生きるためのスピリチュアルヘルス
世界保健機関WHOが提案する4番目の健康
WHOは、健康の定義における身体的、精神的、社会的に続く第4の健康として、人生を意味づけてより良く生きるという「スピリチュアルヘルス」を加える方向で議論しています。しかし日本では、スピリチュアルという言葉に対してカルト的な印象が強く、うさんくさいと思われがちなため、スピリチュアルヘルスが浸透しにくく、研究も進んでいない状況です。
他人の心を読む能力の獲得
私たちが人生に意味を与えるようになった理由については、さまざまな文献から読み解くことができます。私たちの祖先であるホモサピエンスは、600万年前にチンパンジーから分かれたときには、自然界ではとても弱い存在でした。この弱さがゆえに、生存の可能性を高めるために、人類は協力し合うことが必要でした。協力のためには、他人の心を読む能力や他人の態度や行為に意味を与える能力を獲得することがどうしても必要でした。やがて、その能力は自分たちの集団が存在する意味付けを行うようになります。さらに、自然やあらゆる物事にも意味を与えるようになり、ここから宗教心が芽生えたと考えられています。その後、キリスト教やイスラム教などの組織宗教が成立すると、それらが生きる意味や目的を与えてくれるようになりました。そして近代社会になると、人類は個人の生きる意味や人生の目的を考えるようになったのです。
「生きがい」を尊重する地域共生を
日本にはスピリチュアルヘルスに似た概念として、「生きがい」という固有の考え方があります。最近、世界はこの生きがいに注目し始めています。生きがいとスピリチュアルヘルスは同じものなのか、あるとしたらその違いは何であるのか、これからの研究が解明してくれるでしょう。
2021年の調査によると、日本人の5人に1人が孤独を感じています。日本に適したスピリチュアルヘルスのアプローチとしては、個人の生きがいを尊重しながらも、誰も孤立させずに人間関係を築く地域共生のまちづくりが必要になってきているのです。
参考資料
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