心が原因の、長引く体の痛みをケアするには?
自分の気持ちに気づけない失感情症
「失感情症」は、自分の感情を自覚したり表現したりするのが難しく、自分の内面へ目を向けるのが苦手な、性格上の特性です。感情がない・乏しいのではなく、自分の感情に気づきにくい状態で、そうなる背景には、子どものころに受けた過干渉やネグレクトがあるといわれています。
過干渉とネグレクトは正反対のように思うかもしれません。しかしどちらも、子どもが自分の感情を表したり、自分の感情を受け入れてもらったりする経験が少ないために、自分の感情を抑えるようになり、失感情症傾向が表れると考えられています。
体の痛みと心の痛みはつながっている
失感情症は病気ではありませんが、ストレスを自覚できず、がんばりすぎてしまいやすいため、心身症(心理的な影響が身体的な症状としてあらわれる病気)になることがあります。その一つが長く続く痛みです。さまざまな研究で、失感情症の人は、けがの治療が終わったのに痛みが消えなかったり、原因がはっきりしない肩こりや腰痛が続いたりする傾向があることが示されています。
長引く痛みを軽減するために、患者とコミュニケーションをとりながら「感情への気づき」を促す治療法の研究・実践が求められています。例えば、痛みが起こるときの状況や気持ちを書く「痛み日記」はセルフケアに役立つとされています。体の痛みと心の痛みはどこかでつながっているので、マイナスの感情も含めて、自分の気持ちと向き合うことがとても大切なのです。
自然治癒力を高める
柔道整復師は、骨折や脱臼、ねんざなどのけがや痛みの治療をする国家資格です。日本古来の武道(柔道)から生まれて独自に発達した伝統医学で、薬や手術に頼らずに、患者の自然治癒力を高めて回復を図るところが大きな特長です。主に急性期のけがの治療にあたりますが、治療後もアスレティックトレーナーのように信頼関係を築いて長くつきあうこともあります。心身症のような長引く痛みのケアでも、その力を発揮することが期待されています。
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