生物の進化の過程を分子レベルで解明する
分子を使った進化プロセスの解析法
地球上には約3000万種の生物がいると推定されており、そのすべてが一つの共通祖先から進化してきたと考えられています。生物多様化のプロセスの詳細は、まだ完全にはわかっていません。従来から、化石や形態比較の研究が行われてきましたが、化石が残るのは限られた生物だけですし、形態が似ている生物しか対象にできません。そこで、近年は分子を使った解析法が主流になってきています。どんな遺伝子にどのような変化が起こるとダイナミックな変化やマイナーチェンジが起こるかといったことが、DNAやタンパク質の配列情報を使った研究で徐々に明らかにされています。
収斂タンパク質の網羅的な検出
タンパク質の収斂進化に関してはいくつか先行研究があります。例えばイルカやコウモリは別系統で進化してきた生物ですが、超音波を使って周りの空間情報を得る、「エコーロケーション」に関するタンパク質を収斂進化により独立に獲得したことが知られています。
ただし、これらの先行研究はある特定のタンパク質にターゲットを絞って解析されたもので、タンパク質の収斂の全体像はわかりませんでした。そこで対象生物が持つ全タンパク質から網羅的に収斂タンパク質を検出するプログラムが開発されました。食虫植物について調査したところ、虫を誘引する匂いを出すなど、食虫に関係する複数の機能に関わるタンパク質が収斂していることがわかりました。このことから、もともと食虫と関係ない機能を持っていた複数のタンパク質が協調的に収斂進化して、食虫機能を獲得したことが示唆されました。
研究手法の発展
DNAを使った研究の精度を上げる手法の開発も行われています。例えば、精度が高い結果を得るためのフィルタリングの研究や、フィルタリングを施したデータセットを使って、より良く信頼性の高い系統樹を構築するための研究が進められています。DNA配列情報を使った進化研究は、コンピュータとの親和性が高く、コンピュータの活用によるさらなる進展が期待されています。
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先生情報 / 大学情報
静岡大学 グローバル共創科学部 グローバル共創科学科 准教授 堀池 徳祐 先生
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