いつ壊れるか? 開発と同じくらい大切な破壊の研究
大事故につながりかねない材料の疲労
「もの」は使い続けていれば、いつか壊れるときがやってきます。しかし、予期しないときに壊れると、場合によっては大事故につながりかねません。いつ、どのような原因でものが壊れるのか、実験によって材料の変化を調べる研究が行われています。
長年使用された機械で一番の問題となるのは、「疲労」によって亀裂が生じたり強度が落ちたりする現象です。さまざまな金属の疲労は、実は既に150年程前から調べられていますが、まだわかっていないこともあります。当然、カーボンファイバー強化複合材料など新材料の疲労現象についてはわからないことが多く、研究が求められています。
まずは壊してみる!?
疲労現象を知るには、まずはそれを壊すことから始めます。大掛かりな機械の破壊をシミュレーションで割り出すのは難しいのです。実験では高速で回転させる、繰り返し引っ張る、ねじるなどの負荷を与えます。材料によっては、こすれあったり水に濡れたりすると壊れやすいものもあるため、それを防ぐ方法も併せて研究します。例えば、材料そのものを改良したり、使い方の基準をつくったりするのです。
また近年、今までの実験で「壊れるはずがない」とされた材料でも、さらに多くの負荷を与えると壊れることがわかってきました。「超高サイクル疲労」という現象で、これを確かめるには従来の実験では時間がかかりすぎるため、超音波振動を使うなど新しい試験機の開発も進んでいます。
安心・安全な社会を実現するための研究
このような実験の成果は、JIS(日本工業規格)などの規格に生かされています。どのような材料が使われているにせよ、機械が壊れると大事故につながるものには、絶対的な安全基準が必要です。いつ、どのような原因で壊れるのかを調べることができたら、必要以上に頑丈につくったり、やみくもに点検を行ったりしなくてよいので無駄も省けます。安心・安全な社会を守るために、「破壊」の研究は開発と同じくらい大切なのです。
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先生情報 / 大学情報
静岡大学 工学部 機械工学科 教授 島村 佳伸 先生
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