古文書や史料から推理する、当時の人々の生活と国際感覚
江戸の庶民は支配されるだけだったのか
古文書などの史料を調べると、江戸時代の庶民のイキイキと楽しく生きている姿が見えてきます。庶民が書いた日記には、芝居の演目や、買った本、作った料理など、当時の人の生活の一部分が書かれています。
江戸時代の人の識字率は9割以上あったうえ、庶民が土地の登記や税金の徴収という、現在では役所が行う仕事をしていました。役人は、庶民が納税に苦しまずに生きていけることを保証する仕組みを作るとともに、多くの公的な仕事を庶民に任せていました。庶民はそれに応えたことから行政が成り立っていました。
推理のように古文書を読み解く
古文書は生活の断片です。多くの史料や古文書から情報を集めて、パズルや推理をするように、その時代の社会の仕組みや生活、背景を読み解くことができます。こうした古文書は、今も個人宅にたくさん眠っています。それを発見することが歴史の発見になります。また、史料の保全と管理をして後世に残すという、文化財保護について学び実践することもまた大切です。
史料から国際感覚が見え、異文化理解につながる
当時の様子は、古文書以外に絵や屏風などにも残されています。日本の港に来た外国船の絵を見ると、荷物の揚げ下ろしをするのは黒人です。当時のオランダ船などは、ヨーロッパから南半球を回って各国の港に寄りながら日本に来ました。途中の南アフリカで、奴隷貿易で得た黒人が働き手となっています。また、オランダ人は数年に1回、長崎の出島から東海道で江戸まで行きました。多くの見物人が集まり、見物人を対象とした商売も登場しています。このように、日本史から当時の国際感覚を知ることができます。さらに、海外に残る史料から見た日本を検証すると、異なる視点を得ることができるでしょう。
100年後の未来の人が今を見ると、不便な時代だと思うことでしょう。時代が違うと社会や価値観が異なります。地域が違えば価値観も異なります。歴史探究から、国際関係をつかみながら異文化理解の力を高めることができるのです。
参考資料
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甲南大学 文学部 歴史文化学科 教授 東谷 智 先生
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