ニュースから未来を読む!  AIによるリアルタイム景気予測

ニュースから未来を読む!  AIによるリアルタイム景気予測

「言葉を理解するAI」って?

「自然言語処理」はAIの一分野で、人が使う言葉をコンピュータが理解しているかのように処理する技術です。機械翻訳や文章自動要約、ネット検索などでも使われています。また、自然言語処理を応用した「テキストマイニング」では、大量の文章の中から価値のある情報を自動で見つけ出すことができます。こうした技術を活用して、経済や金融市場の動きを予測する研究が行われています。

ニュースから景気が見えてくる!

経済の動きを知るために使われているのが、「景況感指数」という指標です。これは、人々が「景気が良い」と感じているかどうかを数値で表したもので、内閣府や日銀が定期的に公表しています。政府や企業が政策や経営戦略を立てる際に参考にする大切な指標ですが、アンケートを集計して作成されるため発表までに時間がかかり、景気の現状を反映できていないという課題があります。そこで、AIを使ってニュース記事から景況感を予測する手法が開発されています。ウェブ上のニュース記事をディープラーニング(深層学習)で分析することで、ほぼリアルタイムで景気の動きを把握できるようになりました。ただし、新聞社などのニュースソースごとに政治的立場に違いがあり、記事の内容に偏り(バイアス)が出ることがあります。そのため、複数の新聞社に共通する景況感と新聞社ごとの偏りをうまく切り分ける工夫を重ねて、より正確な予測を目指しています。

話し方でわかる経済の行方?

さらに、言葉そのものだけでなく、その伝え方にも注目した研究が行われています。例えば、中央銀行総裁が発言する場面では、話の内容だけでなく、使う表現、発言の文脈などから、経済や金融市場への影響が異なります。また、声のトーンや話す速さ、手ぶりや表情などと言った非言語的な情報も重要です。非言語的な情報も含めて分析する方法は「マルチモーダル分析」と呼ばれています。このような分析によって中央銀行総裁と市場とのコミュニケーションが向上すれば、経済の安定にもつながります。

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先生情報 / 大学情報

甲南大学 知能情報学部  教授 関 和広 先生

甲南大学知能情報学部 教授関 和広 先生

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メッセージ

あなたは何のために勉強をしていますか? 私は高校生のころ勉強が大嫌いで、大学には行かずに働き始めました。でも数年後「もっと勉強していれば……」と思うようになり、初めて本気で勉強して大学に入り、今は教える立場にいます。きっかけも時期も人によって違いますが、今やる気がなくても、いずれ学びたいと思えれば大丈夫です。高校時代は、自分の興味や可能性を探すための時間です。日々の生活を送る中で、何に惹かれるのか考えてみてください。あなた自身のペースで、自分の未来をつくっていってください。

甲南大学に関心を持ったあなたは

国際都市・神戸に位置する本学では、建学の理念「人物教育の率先」を教育の原点とし、ミディアムサイズの総合大学だから実現できる、学部を越えた融合型教育で優れた人材育成を実践しています。岡本・西宮・ポートアイランドの3キャンパスで、現在、8学部14学科1学環の多彩な学びを展開。さらに、2026年度には理工学部を再編し、環境・エネルギー、宇宙・量子、バイオなど次世代分野を融合する「進化型理系」がスタート。2027年度には岡本キャンパス西校舎に新理系棟も誕生予定で、理系教育にも注力しています。