子どもたちに、ものごとの「本質」をつかむ楽しさを伝えたい
立春の日に卵が立つ
昭和22年、「立春の日に卵が立つ」という記事が新聞に掲載されました。物理学者の中谷宇吉郎博士は、科学の立場からこの現象を調べました。その結果、卵の殻には非常に小さな凹凸があり、3つまたは4つの凹凸で平面を支えると卵が立つことがわかりました。立春に限った話ではなかったものの、「卵が立つ」という事実は大きな話題となりました。中谷博士は「世界中の人間が長い間すぐ眼の前にある現象を見逃していたということがわかったのは大発見である」と述べています。
ものごとの本質を考える
多くの児童や生徒は「習っていないことは知らない」と思い込んでいます。例えばチューリップに種はできるでしょうか。小学校で習う「菜の花のつくり」は、花のつくりの一例です。菜の花に限らず、花の咲く植物には必ず種があり、チューリップにもじゃがいもにも種ができるのです。人間の思い込みは、ものごとの本質を隠してしまいます。人間は長い間、丸い卵が立つ事実を見逃してきました。しかし小学生でも5分も挑戦すれば、約半数の児童が卵を立てられます。こうした実証実験を取り入れた授業は非常に盛り上がります。
「感動」の心を育てる
小学校高学年になると、理科嫌いの児童が増えます。難易度だけではなく、先生自身の理科への関心度が大きな要因です。理科好きの児童を育てるためには、まず先生の意識を変える必要があります。例えば大津市科学館では、小中学生を対象に「ものづくり体験」を開催しています。自分でつくることや、できあがった作品の原理や仕組みを学ぶことで「感動」の心を育てようという取り組みですが、小学校の先生をめざす大学生もサポート役として参加し、理科のおもしろさや楽しさを体験しています。
課題に主体的に関わることは、人格形成においても重要です。卵が立つ様子をただ見ていてもおもしろくありません。児童に「なぜ立つのか」を考えさせて、やらせてみることが大切です。子ども教育学では、児童の「感動」や「楽しい」を育てられる先生の育成が求められています。
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先生情報 / 大学情報
びわこ学院大学 教育福祉学部 子ども学科 教授 箱家 勝規 先生
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