実験でストーリーを実証していく

実験でストーリーを実証していく

実験は100%成功させる

実験とは、不確定な事柄を確定し、証明するための手段であり、特に理科系の学問では欠かせません。その実験も、やり方が間違っていたり、比較対象が無くて実験として成立していないようでは研究は効率的に進んではいきません。事前にしっかり実験計画を練り、自分の説を実証するためにはどのような実験が必要かをよく考えなければなりません。しかし実際は、10通りの実験を行っても、事前に期待したような結果が得られることは1、2回程度で、想定外の結果が出ることが大半です。生命現象はそんなに単純ではありません。かといって、悲観的になる必要もありません。キチンとした実験で出た9回のネガティブデータであれば、「二度と同じ実験をする必要はない」わけですから、これは十分な進歩です。つまり、その9回の実験に関しては、最初の想定が間違っていたと考え、すっぱりと捨て去って別の可能性を探ることが出来ます。中途半端な実験や結果のまま次の実験を試しても、結局は元の場所に戻ってくることがあります。出てくる結果がポジティブであれネガティブであれ、戻る可能性がゼロになるような完璧な実験をひとつひとつ積み重ねることが重要です。

サイエンスの世界は、積み重ね

例えば、糖尿病に関与しているタンパク質を探すという実験では、糖尿病のネズミばかりを調べていても解明できません。正常なネズミと糖尿病のネズミを比較して調べる必要があります。試験管内の実験でも、ある薬剤を加えてどのような変化があるかを調べる場合、薬剤を加えていない場合と比較しなければなりません。こうして、ほかの要因が関与する可能性を排除して初めて実験として成立します。
実験の結果によって、次の新しい可能性が必ず生まれます。そしてそれを証明するためにどのような実験を組んでいけばいいのかを改めて考えます。つまりストーリーを探していくのです。ストーリーを実証していくために、また次の実験を行い、結果を解釈して次の道を考えることの積み重ねがサイエンスの世界です。

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先生情報 / 大学情報

香川大学 農学部 応用生物科学科 教授 末吉 紀行 先生

香川大学 農学部 応用生物科学科 教授 末吉 紀行 先生

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メッセージ

秀才や天才である必要はありません。自分が何をしたいのかを明確にし、自分でものを考える習慣があるかどうかが大事です。サイエンスの世界では、論理的な考え方を進めることが大切です。それと同時に自分の研究がどのように優れているのかを知ってもらうためには、他人をいかに納得させるかも重要です。ほかの人に説明する能力が必要なのです。そのためにはプレゼンテーション能力や文章力も欠かせないので、きっちりとしたコミュニケーション能力をぜひ身につけてほしいと思います。

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香川大学は、「知」が価値を持つ時代、21世紀にふさわしい大学になろうとしています。また、個性と競争力を高めるために「地域に根ざした学生中心の大学」をめざしています。
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