自動運転はもうすぐ? 未来の交通と都市の課題

自動運転はもうすぐ? 未来の交通と都市の課題

自動運転の技術と社会的課題

近年、世界中で自動運転をする車両の技術開発が進められています。ただし、それを社会に実装するためには、法整備や都市計画などの受け入れ側の整備も必要不可欠です。特に、自動車やバイクなどが行き交う既存の道路に自動運転車を共存させるためにはさまざまな課題が考えられ、都市の仕組みや交通ルールの見直しが求められています。

地方と都市部の異なる課題

自動運転車の導入にあたっては、地方と都市部で直面する課題が異なります。例えば地方では、駅から目的地までの「最後のひと区間」を担う交通手段としての利用が期待されます。一方で、まちをコンパクトにまとめようという「コンパクトシティ」の方針に逆行してしまう恐れがあります。さらに、駅前送迎が増えると交通量がかえって増加してしまい、混雑を引き起こす可能性も懸念されます。
一方で都市部では、交通量の多い道路にスピードの速い車と、電動キックスケーターなどのスピードの遅い乗り物が混在しており、自動運転の走行スピードの管理が重要です。安全性を高めるには、スピードごとに車線を分けるといった運用が必要になるでしょう。また、自動運転車をタクシーの代替として使う場合、法律に抵触しない乗降場所の確保や、乗客がいない時の待機場所の問題なども浮上します。需要と供給のバランスが崩れれば、かえって渋滞や環境負荷への悪影響を招く可能性もあるのです。

実用化への道のりと予測

このように、自動運転の実現には技術だけでなく、それを受け入れる社会側の準備が欠かせません。当初は2025年までに、高速道路などの特定の条件下で運転手が不要となる「レベル4」に到達する地域が多く見込まれる予定でしたが、現状では実現になお時間がかかるとみられています。現時点で見据えられている現実的なゴールは、都市部での無人・完全自動のタクシーの運行だと考えられます。それに向けて、制度設計や都市計画の観点からインフラ整備やルールづくりを着実に進めていく必要があるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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大阪産業大学 建築・環境デザイン学部 建築・環境デザイン学科 講師 高山 宇宙 先生

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土木計画学、交通工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

都市や交通に関わる分野は、理系・文系どちらの視点からも学ぶことができる幅広い分野です。例えば、地元のまちのお祭りや地域の取り組みについて考えるだけでなく、都市をデータで分析したり、交通の仕組みを考えたりすることなどです。大切なのは、自分が何に興味を持っているのかを、よく考えてみることです。その答えが見つかれば、自然と進むべき進路も見えてくるはずです。そしてもし都市や交通を科学的にとらえてみたいと思ったなら、建築や工学の分野で学ぶことも選択肢に入れてみてください。

先生への質問

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大阪産業大学 建築・環境デザイン学部・学科は、もの・建築・環境・空間・自然・都市に関連する幅広いデザイン分野を学べる学部・学科です。この学科では、人々の快適さや機能性を高めるデザインを通じて、社会に貢献するプロフェッショナルを育成しています。
1年次には各コースの基礎やデザインの意義、問題点を学び、2年次以降に専門分野を選択します。どのコースを選んでも建築士受験資格が得られるほか、コースによっては理科・工業教員免許の取得も可能で、将来の職業に合わせたスキルを効率的に習得できます。