乗り心地で高める高齢者の「生活の質」

問題となる高齢者や身体が不自由な人の「足」
過疎化に加えて人手不足などもあり、各地で路線バスの廃止が相次いでいます。一方で、高齢者による運転免許の自主返納が増加しています。高齢者や身体が不自由な人の「足」をどのように確保するかは、ますます重要になることでしょう。そんな中、免許がなくても使用できるハンドル操作型の電動車いす「シニアカー」やパワーアシスト型の車いすが注目されるようになりました。移動が困難な人の近距離移動に力を発揮する乗り物として期待されているのです。しかしこれまでのシニアカーは、操作性や安全性に比べて乗り心地についてあまり配慮されてきませんでした。
乗り心地を数値化し、高める方法を探る
「乗り心地」は主観的なものですが、数値化することは可能です。具体的には車いす・人間の双方にセンサを取りつけて、振動加速度を計測します。そのデータを基に、乗り心地に影響を与える周波数を見ていくのです。それらの中に、双方から検出される共通の周波数があれば、共振が起こっており、つまり乗り心地が悪いと判断できます。集めたデータを基にタイヤを変えてみたり、サスペンション(衝撃を吸収する装置)に改良を加えたりして、周波数がどう変化するかを調べ、乗り心地を高める方法を探っていきます。
福祉や医療以外にも応用分野が広がる
乗り心地は、乗る人の体形などにも大きく影響するため一筋縄ではいきません。しかし、改良が進めば使う人の「QOL(生活の質)」は間違いなく向上します。それだけでなく、乗り心地を高める方法は病人やけが人を寝かせたまま運ぶストレッチャーなどにも応用できますし、精密な機械を運ぶための台車といった、福祉や医療とは全く異なる分野にも広がる可能性があります。シニアカーそのものも、乗り心地の向上に加えてもっともっとスタイリッシュになれば、街中を走っている電動キックスケーターのように、若者が都会の近距離移動に使用するようになることも考えられます。
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