マーケティングで農業に活路を見出せ!

マーケティングで農業に活路を見出せ!

商品名に込められた販売戦略

福岡県のブランドイチゴ「あまおう」は、あかい・まるい・おおきい・うまい、の頭文字からネーミングされています。また栽培を県内に限定し、品質の良い果実の生産でブランド力を高めています。「あまおう」と発音すると口が縦に大きく開くので、大きいイチゴだとイメージしやすく、また高価格=高品質と意識させる販売戦略が効果を発揮しているのです。一方「とちおとめ」は、栃木県のブランドだとわかるネーミングと、種苗の販売数を増やす戦略を取り、今では生産量日本一を誇っています。このように、商品を売るためのマーケティングは農産物においても大きな役割を果たしています。

利用客の視線を追う

高知県産のナスは、血圧改善効果のある機能性表示食品として認められました。パッケージをリニューアルするなど機能性の情報発信を行っていますが、さらなる訴求が必要です。そこで消費者行動の分析が求められており、消費者の視線の動きが研究されています。農産物直売所を利用する消費者に、アイトラッカーという機器を装着してもらい、よく見られている場所や見る順序などを分析します。機能性に関する情報を目にしやすいのは、紙に書いたPOPか、それともレシピを含む動画なのか、消費者行動を販売戦略に活用しようという研究が始まっています。

福島の農業経営を支援

福島県浜通りの相双(そうそう)地域は震災で大きな津波被害を受けました。その場所で農業を営む農家にアンケート調査を実施したところ、今後も長く続けることは難しい、という回答が多く集まりました。このままでは地域農業が失われかねません。また、こうした状況は福島に限ったことではなく、少子高齢化の進む日本各地で起こり得ます。マーケティングとは従来、競合との競争に打ち勝ち、自分たちの商品をより多く売るために行われてきましたが、農業においては地域一体の取り組みが重要です。一過性に終わらない6次産業化支援、稲作以外の穀物栽培推進や販路拡大など、農業経営が持続的に成り立つ支援が急がれます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京農業大学 国際食料情報学部 アグリビジネス学科 教授 半杭 真一 先生

東京農業大学 国際食料情報学部 アグリビジネス学科 教授 半杭 真一 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

農業経済学、農業経営学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は、学部時代に出会い、胸の中でずっと大事にしてきた言葉があります。「農学のロマンティシズムに冷や水を浴びせることも農業経済学のレゾンデートル」というものです。
農学の研究者にとって、生産量向上や病虫害低減の実績は誇りです。しかし、その一方で、米余りをなんとかしなければなりませんし、農家がもうからなくて困っているのも事実です。現実と向き合い、問題解決のために農業経営・農業経済の側面から研究することは重要です。農学の力を信じ、マーケティングの力で一緒に日本の農業を元気にしていきましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

東京農業大学に関心を持ったあなたは

東京農業大学は、地球上に生きるすべての動物・植物・微生物と向き合い、それらの未知なる可能性、人間との新たな関係を追究していく大学です。食料、環境、健康、バイオマスエネルギーをキーワードに、創立以来の教育理念「実学主義」の下、実際に役立つ学問を社会のため、地球のため、人類のために還元できる人材を養成しています。世田谷、厚木、オホーツクの3キャンパスに6学部23学科を有します。