微生物の数を大幅に増やせば未知の力を発揮する!
「発酵食品が健康に良い」のはなぜ?
「発酵食品は健康に良い」と聞いたことがあると思いますが、その理由を考えたことはありますか? 一般に、「整腸効果がある」「抗酸化作用がある」などと言われていますが、発酵食品の何が、身体のどの部分にどんな働きをするのかは完全にはわかっていません。牛乳や大豆などを発酵食品に変化させるのは、乳酸菌や納豆菌などの微生物ですが、これらの微生物が持つ能力も、まだ100%は解き明かされていません。
自分を守るために、菌が「抗菌物質」を生成
微生物のはたらきが、人間にとって有益ならば「発酵」と呼ばれますが、有益でないならば「腐敗」と呼ばれます。「発酵」の仕組みは、食物に含まれるたんぱく質や糖などを微生物が分解する(食べる)ことで、アミノ酸や乳酸、二酸化炭素などが生成される現象のことです。では、発酵食品に腐敗させる微生物が侵入したらどうなるのでしょうか。例えば、納豆菌と近い種類に、腐敗菌である「バチルス属」という微生物が存在します。繁殖しやすい環境が似ているので、納豆菌とバチルス属とが同時に繁殖しても不思議ではないように思えます。ところが、納豆菌がある程度まで増えると、自分たちを守るために、ほかの菌に対する抗菌物質を出すようになるのです。
数を増やせば未知の力が現れるかも
微生物は、「数の力」で勢力争いをしながら自分たちを守っているのと同時に、抗菌物質生成などたくさん増えることから発揮される力もあります。このように、微生物は、自然界に存在する数の何倍もの密度で増えると、私たちがまだ知らない機能を発揮するかもしれません。すでに知られている微生物のうち、約2割が人間にとって有益、2割が有害、残る約6割は何の役にも立たないと言われています。しかし、人為的に密集繁殖させると、有益な微生物はさらに有益に、役立たなかった微生物も何らかの働きをするかもしれません。小さな微生物の秘めたる力を発見するのは、大きな醍醐味です。
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先生情報 / 大学情報
東海大学 農学部 食生命科学科 講師 多賀 直彦 先生
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