「パターン認識技術」を視覚障害者の学習支援に生かす

「パターン認識技術」を視覚障害者の学習支援に生かす

理系科目参考書の「触図」がネックに

視覚障害者の人たちが何かを学ぶ時、点字資料や音声教材、コンピュータの画面読み上げソフトなど、文字については支援が充実してきています。しかし、図やグラフの認識を助けてくれる方法があまりありません。特に理系の勉強では図が重要で、数学ではグラフをイメージできないと理解が難しい概念もあります。
学校の教科書は点字化されており、図は凹凸で線や形を表した「触図」になっていますが、参考書類は紙の本しかありません。それを人の手で点訳、触図にするには膨大な時間がかかり、学習支援が進んでいないのです。こうした理系の書籍の点字化・触図化を進め、理系の資格試験に視覚障害者が挑戦できる可能性を広げるために、画像処理技術を応用した研究が進められています。

拡大してもぼやけない画像に変換するには

既存のスキャナやカメラを使うと、点描画のように点の集まりで線を表現する「ビットマップ」という形式の画像になります。しかし、これは拡大・縮小すると画像がぼやけるため、触図にする時に必要な大きさに変更しにくいものです。
一方、「ベクター」形式では、「点A・Bをつなぐ」というプログラムで線が表現されるため、拡大してもクリアな画像になります。そこで「パターン認識」という画像処理技術を応用し、ビットマップの点の集まりから線を抽出してベクター形式に変換する技術が研究されています。

画像処理技術の応用でこんな支援も

この技術の応用で、触図をつくるだけでなく、目の不自由な人が図を描くプログラムも研究されています。数値を入力して図を描くソフトは既にありますが、視覚障害者にはとても使いにくいのです。例えば、視覚障害のある理系科目の先生が、簡単に教材を作れるようなソフトウエアが求められています。また、パターン認識の技術が視覚障害者の支援に応用できる例として、スマートフォンの動画撮影機能で目の前のものを認識し、音声で教えてくれるアプリの研究開発も行われています。

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富山県立大学 情報工学部 データサイエンス学科 (※2024年4月設置) 教授 高木 昇 先生

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メッセージ

人が生きる道は全員一緒ではないので、どんなやり方でも人生を有意義に過ごせると思います。名を成した人たちの本を読んでいると、若い時からそれがやりたかったわけではなくて、ほかに選択肢がなく、それを一生懸命やっているうちに成功した、とおっしゃる人もたくさんいます。私自身も、偶然の出会いで選択が変わってきて、今の研究をしています。若い時に一生懸命がんばったことは、たとえ将来その道に進まなくても必ず糧になるはずなので、興味を持ったらそこにエネルギーを注いでほしいです。

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本学は、1990年の建学以来、創造力と実践力を兼ね備えた人材育成や高度な研究開発、産業界との連携による地域貢献を果たしながら、最適な教育・研究環境を整えてきました。
2024年4月には、「情報」を軸とする工学の専門知識と、データサイエンスの専門知識を兼ね備え、デジタルの力を活用して社会の潜在的課題の解決策を導き出す能力を持った人材を育成する、「情報工学部」を新設しました。新しい校舎も建設予定です。
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