「パターン認識技術」を視覚障害者の学習支援に生かす
理系科目参考書の「触図」がネックに
視覚障害者の人たちが何かを学ぶ時、点字資料や音声教材、コンピュータの画面読み上げソフトなど、文字については支援が充実してきています。しかし、図やグラフの認識を助けてくれる方法があまりありません。特に理系の勉強では図が重要で、数学ではグラフをイメージできないと理解が難しい概念もあります。
学校の教科書は点字化されており、図は凹凸で線や形を表した「触図」になっていますが、参考書類は紙の本しかありません。それを人の手で点訳、触図にするには膨大な時間がかかり、学習支援が進んでいないのです。こうした理系の書籍の点字化・触図化を進め、理系の資格試験に視覚障害者が挑戦できる可能性を広げるために、画像処理技術を応用した研究が進められています。
拡大してもぼやけない画像に変換するには
既存のスキャナやカメラを使うと、点描画のように点の集まりで線を表現する「ビットマップ」という形式の画像になります。しかし、これは拡大・縮小すると画像がぼやけるため、触図にする時に必要な大きさに変更しにくいものです。
一方、「ベクター」形式では、「点A・Bをつなぐ」というプログラムで線が表現されるため、拡大してもクリアな画像になります。そこで「パターン認識」という画像処理技術を応用し、ビットマップの点の集まりから線を抽出してベクター形式に変換する技術が研究されています。
画像処理技術の応用でこんな支援も
この技術の応用で、触図をつくるだけでなく、目の不自由な人が図を描くプログラムも研究されています。数値を入力して図を描くソフトは既にありますが、視覚障害者にはとても使いにくいのです。例えば、視覚障害のある理系科目の先生が、簡単に教材を作れるようなソフトウエアが求められています。また、パターン認識の技術が視覚障害者の支援に応用できる例として、スマートフォンの動画撮影機能で目の前のものを認識し、音声で教えてくれるアプリの研究開発も行われています。
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