映像が、日常空間を「特別なもの」に変えてくれる
映像の新たな可能性を探る
映画、ドラマ、アニメなど従来の映像コンテンツには物語があり、読み取るべき筋があります。また、劇場、テレビ、DVDといった限られたメディアは非日常的な存在であり、私たちの生活とはどこかかけ離れた存在です。しかし、風景のように日常空間に溶け込む映像があっても良いのではないか。絵や写真を飾るように、映像を飾ることを楽しんでも良いのではないか。こうした問題提起から、映像表現の世界では、従来のコンテンツやメディアにとらわれない「映像による日常空間の変容」が探究されています。
新しい時代の映像表現
今はどこを見渡しても、映像が目に入ってくる時代です。大都市の巨大広告は、多くがデジタルサイネージ(電子看板)の映像に置き換わっています。2021年に突如現れた「新宿駅東口の巨大三毛猫」は知っている人も多いでしょう。緩やかに湾曲したL字型のディスプレイに映し出される、目の錯覚を利用した3Dコンテンツは大きな話題となりました。特殊なメガネを使うことなく、まるで本当にそこに猫がいるかのように思わせてくれます。また、2023年4月にオープンした「歌舞伎町タワー」のフードホールでは、食と音楽・映像が融合し、映像がインテリアの一部として空間を彩っています。映像は「見る」ものから「眺める」ものへと変容を遂げています。
映像で社会はもっと豊かになる
映像はもっと身近な空間にも展開できるはずです。例えば、掛け軸の代わりに大自然の風景を襖(ふすま)に投影して茶の間を飾る、照明の代わりに木漏れ日や夜空で部屋を照らすなど、映像には日常空間を「特別なもの」に変える力があります。映像表現の技術やアイデアと、それを映し出す機器は相互に影響し合いながら、進化し続けています。既存の足跡をたどるだけではなく、新しい領域を広げようとすることで、これまでにない表現が生まれます。映像の可能性は無限大です。今後も映像の新しい楽しみ方が次々と提案されていくことでしょう。
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先生情報 / 大学情報
武蔵野美術大学 造形構想学部 映像学科 講師 山崎 連基 先生
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