スポーツ選手は、なぜ相手の動きを予測できるのだろう?
スポーツ選手は本当に目がいいのか?
スポーツ選手は動体視力が良いとか、相手の動きがよく見えているというイメージがあります。でも、そうではない場合もあるのです。空手の選手は、攻撃を見落とさないために、相手のあごや胸から目を動かさないように指導を受けます。「目を動かさないように」といっても、目は動こうとします。目が動こうとするのを止める際に生じる力が、動いていないものが動いて見える「錯視」をおこすことがあります。競技や生活をするのには支障ありませんが、目を止めていられる空手の選手ほどこの錯視が大きいことがわかりました。
選手の動きを予測する実験
その一方で、やはりスポーツ選手は相手の動きをよく見て、素早い反応をする能力に優れています。対戦相手がドリブルをしながらまっすぐ迫り、右または左に方向を変えるサッカー場面の映像を用意し、サッカー熟練者とそうでない人たちに映像を見せます。この際、方向の変化が開始する時点を基準に、0.4秒前、0.2秒前など、映像を途中で止めて、対戦相手が左右どちらに方向を変えるかを予測してもらいます。すると0.4秒前の映像でも、サッカー熟練者はそうでない人たちよりも正確に予測できたのです。フェイント動作を含む映像でも同様な結果が得られました。体の傾きなど、全体のパターンを見て、先の動きを予測していると考えられます。
知覚や認知の領域を扱う心理学
人間は、物をそのまま見ているのではなく、脳で解釈して認識しています。パラパラ漫画は静止画ですが、パラパラめくりながら見ると、まるで動いているように見えるのがその一例です。このような知覚や認知の研究は生物学・生理学などのイメージがありますが、心理学でも扱っています。知覚や認知を対象にした心理学の研究は、スポーツ選手や車の運転者の視覚の仕組みを明らかにしたり、臨場感あふれる映像の演出をしたりと、さまざまな分野に生かすことができるのです。
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愛知淑徳大学 人間情報学部 人間情報学科 教授 瀬谷 安弘 先生
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