講義No.13202 薬学

脳が乗っ取られる? 薬物依存形成メカニズムの解明

脳が乗っ取られる? 薬物依存形成メカニズムの解明

市販の薬にも乱用・依存のリスクがある

決められたルールを守らずに薬を使うことを「薬物乱用」といいます。覚醒剤や大麻などの規制薬物の乱用が危険なのは、これらの薬にやめたくてもやめられなくなる「依存性」があるからです。
依存性は薬の副作用の一つで、病院で出される処方薬や、薬局などで売られている市販薬の中にも依存性をもつものがあります。日本では最近、市販薬の乱用・依存も大きな問題となっており、正しい知識をもって薬物乱用防止に努めることは薬剤師の大切な責任です。

脳がハイジャックされ、欲求を止められなくなる

薬をやめられなくなるのは「報酬系」という脳内の神経回路に異常が起きるためと考えられており、動物や培養した脳神経細胞を用いて、そのメカニズムを明らかにする実験・研究が行われています。
報酬系は、食べたいものを食べたときに満足したり、一生懸命勉強をしてよい成績をとったときに達成感を得たりする大切な仕組みで、やる気のもとにもなります。ところが依存性のある薬物は、報酬系に直接作用して薬を使うだけで大きな快感を引き起こすため、「どうしても薬がほしい」という強い欲求が現れるようになります。薬が報酬系を乗っ取ってしまい、脳が欲求を止められなくなるのです。
ゲーム依存やスマホ依存でも同じような脳の変化が起きると考えられています。薬物依存の研究は、これらのさまざまな依存症の予防・治療のためにも重要です。

光る細胞で危険ドラッグを検出

規制薬物に化学構造を似せて作られた「危険ドラッグ」の研究も行われています。例えば、危険ドラッグの有害成分に反応して発光する細胞を作り、新たな危険ドラッグを検出する手法が開発されています。未知の薬物をその細胞に与えて、「光れば有害」とすぐに判定できるため、いち早く対策を講じてその薬物が広がるのを防げます。このように薬物の危険性を簡単かつスピーディに見極める手法の開発も、薬物乱用防止に関わる大切な研究の一つとなっています。

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先生情報 / 大学情報

湘南医療大学 薬学部 医療薬学科 教授 舩田 正彦 先生

湘南医療大学 薬学部 医療薬学科 教授 舩田 正彦 先生

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薬学、薬理学、精神薬理学

メッセージ

私たちは薬物乱用・依存についての研究を行い、薬物規制施策に役立てています。また、薬物乱用防止の啓発資料の作成などにも取り組んでいます。薬物乱用・依存は世界的に深刻な問題です。海外では基礎研究が活発に行われていますが、日本は基礎研究者の数が少なく、私たちは海外の専門家と交流しながら研究を進めています。脳の仕組みを調べたり、細胞を作ったり、各国の規制状況を調べたりと、いろいろなことができるので、興味があるならぜひ当研究室へ! 若い人のアイデア、力に期待しています。

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湘南医療大学は、2015年4月に横浜に開学した医療大学です。保健医療学部(看護学科・リハビリテーション学科)に加え、2021年4月には薬学部(医療薬学科)を開設し、2学部3学科体制となりました。
多くのグループ病院や施設をもつ湘南医療大学は、横浜・湘南地域で、優秀な医療のスペシャリストを育てていきます。ぜひ、夢ナビ講義をお読みいただき、興味をもち、医療への道を目指してみませんか。そんなあなたの夢を、湘南医療大学が応援します。