脳が乗っ取られる? 薬物依存形成メカニズムの解明
市販の薬にも乱用・依存のリスクがある
決められたルールを守らずに薬を使うことを「薬物乱用」といいます。覚醒剤や大麻などの規制薬物の乱用が危険なのは、これらの薬にやめたくてもやめられなくなる「依存性」があるからです。
依存性は薬の副作用の一つで、病院で出される処方薬や、薬局などで売られている市販薬の中にも依存性をもつものがあります。日本では最近、市販薬の乱用・依存も大きな問題となっており、正しい知識をもって薬物乱用防止に努めることは薬剤師の大切な責任です。
脳がハイジャックされ、欲求を止められなくなる
薬をやめられなくなるのは「報酬系」という脳内の神経回路に異常が起きるためと考えられており、動物や培養した脳神経細胞を用いて、そのメカニズムを明らかにする実験・研究が行われています。
報酬系は、食べたいものを食べたときに満足したり、一生懸命勉強をしてよい成績をとったときに達成感を得たりする大切な仕組みで、やる気のもとにもなります。ところが依存性のある薬物は、報酬系に直接作用して薬を使うだけで大きな快感を引き起こすため、「どうしても薬がほしい」という強い欲求が現れるようになります。薬が報酬系を乗っ取ってしまい、脳が欲求を止められなくなるのです。
ゲーム依存やスマホ依存でも同じような脳の変化が起きると考えられています。薬物依存の研究は、これらのさまざまな依存症の予防・治療のためにも重要です。
光る細胞で危険ドラッグを検出
規制薬物に化学構造を似せて作られた「危険ドラッグ」の研究も行われています。例えば、危険ドラッグの有害成分に反応して発光する細胞を作り、新たな危険ドラッグを検出する手法が開発されています。未知の薬物をその細胞に与えて、「光れば有害」とすぐに判定できるため、いち早く対策を講じてその薬物が広がるのを防げます。このように薬物の危険性を簡単かつスピーディに見極める手法の開発も、薬物乱用防止に関わる大切な研究の一つとなっています。
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