日本の魅力を観光客に伝えるには? 観光産業に求められる視点
観光産業に必要な異文化理解
日本では2012年から、外国人(インバウンド)の観光客が増えていますが、それにともなって観光産業に携わる外国人従業員も増えてきています。しかし彼らの文化的背景を知らなければ、効果的な人材育成は難しいでしょう。例えば日本の旅館などでは、従業員が先輩の働いている姿を見て学ぶことは珍しくありませんが、外国人従業員の教育では効率的とはいえません。日本人は多くの文化的背景を共有しているため、非言語で多くの情報を伝えることができます。しかし違った文化で育った外国人に対しては、言葉で明確に伝えなければ意思疎通がうまくいかないことがあります。日本で働く以上、日本の文化や習慣にしたがってもらうべき場面も存在します。ただし一方的に押し付けるのではなく、異文化も尊重したうえで接しなければ共生は難しいでしょう。
日本の魅力は何?
外国人の視点で日本の魅力に気づくことも、観光においては重要です。山梨県に富士山と桜と五重塔を一緒に撮影できる観光スポットがありますが、これは外国人のSNS投稿によって有名になりました。日本人が何気ない日常的なものだと思っている風景も、文化的背景が異なる外国人には魅力的に見えるのです。ただし世界標準に合わせすぎると日本のユニークさが失われてしまうため、何を見せて、何を変えずに守っていくのかといった取捨選択が必要です。
現実には存在しない人と観光できる日が来る
近年では、観光を面白くするためにテクノロジーを活用する「スマートツーリズム」が普及してきました。例えば城跡にVR(仮想現実)やAR(拡張現実)を使って、まだ城があった当時の姿を再現している観光地もあります。
今後通信環境がさらに改善され、リアルタイムで膨大な情報のやりとりが可能になると、アニメのキャラクターや亡くなった人など、現実には存在しない人物と旅する新たな観光を楽しめる可能性もあります。
新しい視点やテクノロジーを取り入れることで、日本の観光産業はまだまだ発展できるでしょう。
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玉川大学 観光学部 観光学科 教授 法島 正和 先生
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