地域包括ケアの要、訪問看護師を支える体制づくり

地域包括ケアの要、訪問看護師を支える体制づくり

地域での暮らしにかかわる訪問看護師

今や看護師の活躍の場は、病院やクリニックだけではありません。訪問看護ステーションや企業、学校、高齢者や障害者などの福祉施設、自治体や保健所など多岐に渡ります。
中でも看護師の役割が重要なのが、地域包括ケアシステムです。これは、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるように、「住まい・医療・介護・予防・生活支援」を包括的に提供する体制のことで、国がその構築に力を入れています。看護師は、訪問看護で家族や地域とかかわり、医師や薬剤師、ケアマネジャーなどと多職種連携をしながら、健康維持・促進も含めた住みよい地域づくりに貢献しています。

訪問看護師を支える体制を

日本財団の調査によると、自宅で人生の最期を迎えたいと希望している人は約60%でした。しかし実際に自宅で死を迎える人は20%にも満たない状況で、80%近くの人が病院や施設で亡くなっています。超高齢社会となった今、病院で看取(みと)りができる数は限られており、在宅看護の重要度は増しています。
基本的に1人でケアする訪問看護師は、経験が浅い人ほど看護への責任を強く感じ、生活環境に合わせたケアや、患者や家族との関係などに不安や戸惑いが生じやすくなります。そうした看護師へのケアや成長の支援体制を整えることが急務となっています。

看取りへのケアも

一方で、訪問看護にはしっかり患者と向き合う看護の本質があり、充実感を得ている人も多くいます。看取りの中では、最期まで家族とおしゃべりしたり、好きなものを食べたりして旅立つ人もいます。死は身近なものであり、人は必ず死を迎えます。病院では命を助ける医療をしますが、訪問看護では死は当たり前にあり、その人らしく最期までどう生きるかを支えているのです。
看取りにかかわる看護師や介護士たちの勉強会や、思いを語りあえる交流会などがあれば、自身の成長ややりがいにもつながるでしょう。自宅で最期を迎える人たちのためにも、訪問看護師を支える環境を整える必要があるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

熊本保健科学大学 保健科学部 看護学科 講師 澤﨑 美香 先生

熊本保健科学大学 保健科学部 看護学科 講師 澤﨑 美香 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

地域・在宅看護論、看護教育学、看護学

先生が目指すSDGs

メッセージ

病気やけがをした時に、どんな気持ちで、どうしてほしいと思いましたか? その思いをくみ取り、支えたいという気持ちが看護の入り口です。看護師は病院勤務だけではなく、必要な人のところへ駆けつける人になりつつあります。現場では人とのコミュニケーションが不可欠です。技術や知識はいくらでも学べます。今は、人と真剣にかかわってみてください。一人でもいいので、自分の本心を語ることができる友だちをつくりましょう。なんでも本気で話し合うことから、聞く、伝える力を身につけることができます。

熊本保健科学大学に関心を持ったあなたは

「生きる」をひらく、かけがえのない一人に
熊本保健科学大学では、医学検査、看護、リハビリテーションの3つの学科で最先端の専門知識と技術を修得するとともに、学科間の連携によりチームスタッフにふさわしい知性と教養を身に付けます。また、医療の多様化と変化に対応しながら、患者さんのQOL(Quality of Life:生活と人生の質)にも配慮できる優れた医療人を目指します。