エイズ発症を防ぐHIV感染症の治療とHIVの薬剤耐性獲得の問題
HIVは一度感染すると体の中から排除できない
通常、ウイルスが感染しても身体に備わっている免疫がウイルスを撃退し、身体の中から排除することができます。しかし、一度感染すると身体の中のウイルスを完全に排除できないウイルス感染症があります。その一つがHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症です。ウイルス遺伝子が細胞DNAの中に入り込んでしまうため、現在の医療では、ウイルス遺伝子だけを取りだしたり、感染した細胞を身体の中から完全に排除することが出来ません。それでも細胞にHIV を侵入させない、細胞の中でHIVを増殖させない、細胞DNAに入り込ませない、といった治療薬でウイルスの活性化を防ぎエイズ(後天性免疫不全症候群)の発症を抑えることが出来ます。
HIVの薬剤耐性における検査と研究
臨床検査には遺伝子を調べる検査があります。遺伝子検査は、抗がん剤などの治療に対して効果が期待できるかを調べたり、血液などの検体の中にウイルス遺伝子があるか、またその量を調べたりするものです。一方で、HIVの遺伝子を解析し、薬剤耐性が起きているかどうか、またどの薬剤に耐性が見られるかなどを評価します。研究では、HIVがどのように薬剤耐性を獲得するかを解明することで、薬剤耐性に対応できる新薬の開発につながることもあります。
服薬をきちんとすることが大事です
HIV感染症は世界三大感染症のひとつであり、世界には約3400万人、日本にも約2万人の感染者がいます(2021年現在)。感染してもきちんと服薬すれば問題なく通常の生活を送れますが、服薬しないと死の危険があるエイズを発症してしまいます。また不十分な治療や服薬を怠ることで、体の中のHIVが複数の薬剤に耐性を持ってしまい、薬が効かないウイルスの出現も起きてきます。多剤耐性HIVにも対応できる薬の開発とともに、1日1回の服薬、あるいは月1回の注射薬で効くといった服薬の手軽さも求められています。それが新規のHIV感染者やエイズによる死者数を減らすことにつながります。
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