HIV/AIDS患者のセルフマネジメントを支援する看護
裁判の和解からスタートしたHIV医療
日本のHIV医療体制は、1996年の薬害エイズ裁判の和解をきっかけに整備されました。翌年には治療が始まり、薬でウイルス量をコントロールしていれば、HIV陽性者も自分らしい生活をおくることができるようになりました。患者は通院しながら治療を継続することになるのですが、薬は生涯ずっと服用し続けなければなりません。その間に、精神的あるいは経済的な理由などから、内服や通院の継続が困難になることも想定されます。そのため、「HIV/AIDSコーディネーターナース」が誕生するなど、「外来」の場で、陽性者をしっかりとサポートしていくことが求められています。
看護を考えるきっかけとなるHIV/AIDS看護
しかし、HIV陽性者の看護となると、たとえベテランの看護師でも迷いが生じるようです。性感染症であるため、問診の際には性的指向(しこう)にも触れることになります。しかし、看護師側がその質問をためらってしまったり、患者のプライバシーに敏感になりすぎてしまったりして、必要な情報が得られないというケースもみられます。問診については、質問の必要性を認識していればほかの項目と同じようにヒアリングできるはずですし、そのことに改めて気づき、自分の看護を見直すきっかけになるのがHIV/AIDS看護の特徴といえます。
患者の「セルフマネジメント」を支援する
HIV陽性者は、周囲に知られるかもしれないという不安に加え、大切な人との関わりに影響を及ぼすという、大きなストレスを抱えながら生活しています。だからこそ、医療者は陽性者の最初のサポーターになるよう努力すべきです。たとえ生きづらさを抱えていても、陽性者自身が治療と生活のバランスをうまく取りながら、自分の人生を前向きに生きていってほしいと思いますし、そうできれば素晴らしいと思いませんか? したがって、看護する側は陽性者が自分の人生を生きられるように、「セルフマネジメント」を支援するよう心がける必要があるのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 健康福祉学部 看護学科 准教授 島田 恵 先生
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