講義No.10594 医療技術

学校や地域で子どもを支援する作業療法士の役割

学校や地域で子どもを支援する作業療法士の役割

ボディイメージの重要性

0歳から3歳は人間の発達にとって大切な時期です。この時期に体を動かし、頭を使うことでさまざまな感覚が脳に入力され、統合されていきます。そして「ボディイメージ(自分の体に対する感覚)」が養われ、ボールを投げたり、スキップをしたり、また服を着たり靴を履いたりといった身の回りのこともできるようになります。しかし、この時期に十分な感覚の入力がないと、運動や身の回りのこと、勉強なども苦手になるため、学校でも周囲に遅れをとってしまう子どもが近年増えています。

遊びを取り入れた練習

学校では特別支援学級や補助教員を置いて、支援が必要な子どもたちに対応しています。平成30年の法改正により、そこに作業療法士も加わりました。その人にとって『意味のある作業』を支援する専門職作業療法が、学校と連携しながら一人ひとりの発達状況や課題を共有し、専門的なアセスメント(評価)や練習を行います。練習は子どもにとって『意味のある作業』である『遊び』を取り入れる点などが特徴です。例えばすごろく遊びを取り入れることで、さいころの目を数え、「あと何マスでゴールできるか」という計算を楽しむようになり、算数の概念、能力が鍛えられます。ほかにも触覚や圧覚、手足を動かす感覚を『遊び』を通し、脳に刺激を与え運動発達を促します。

地域リハビリテーションにおける作業療法士

近年、地域リハビリテーションの重要性が説かれています。これは、その人が『その人らしく』あるためには住み慣れた地域で生活できることが重要であり、そのために医療や福祉、教育、就労といった専門機関が連携していくという考え方です。例えば、発達障がいのある子どもが地域の学校に通えるようにすることも、地域リハビリテーションの一環です。医療的な専門性をベースに、保健、福祉や教育、就労にも通じることができる作業療法士には、地域において医療・保健・福祉・教育・就労の橋渡しになることも期待されているのです。

参考資料

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

帝京大学 福岡医療技術学部 作業療法学科 准教授 轟木 健市 先生

帝京大学 福岡医療技術学部 作業療法学科 准教授 轟木 健市 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

作業科学、作業療法学

先生が目指すSDGs

メッセージ

医療や介護、福祉の仕事は対人援助職と呼ばれます。いずれも人に向き合う仕事ですから、自分の価値観で相手の考えを判断したり、「それは違う」と否定したりする「審判的態度」をとってはいけません。それよりも、相手の言葉にきちんと耳を傾けて、まず「そうですね」と認める受容的な態度が求められます。
あなたが友だちや周囲の話を聞くことが好きで、相手の意見を受け入れることを苦にしないのであれば、対人援助職に求められる素養に近いものを持っていると思います。将来の選択肢としてぜひ考えてみてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

帝京大学に関心を持ったあなたは

帝京大学 福岡キャンパスは有明海に面した雄大な自然と最新設備が揃ったキャンパスです。理学療法、作業療法、看護、診療放射線、医療技術(救急救命・臨床工学)の5学科を擁する福岡医療技術学部では、現代の高度な医療に欠かせない知識や技術に加え、患者さんや他職種のスタッフへの想像力やコミュニケーション能力といったチーム医療に必要とされる素養を高めながら、大牟田市という歴史ある土地で官民一体となり、各自治体と連携しながらさまざまな取り組みを実施していくことで医療のプロとして地域に貢献できる人材を育成します。