産業界が注目する安全文化とは

産業界が注目する安全文化とは

安全文化が注目されるきっかけ

1999年、茨城県東海村の原子力発電施設で大きな事故がありました。国が定めたマニュアルに従わずに作業したことによって、核分裂連鎖反応が起こり、死者2名と600名以上の被ばく者を出した、当時、日本で最悪の原子力事故です。それ以来、「いかにして事故を防ぐか」の研究が注目されるようになりました。それとともに「安全文化」という言葉も知られるようになりました。安全文化とは、安全を最優先させる組織文化のことで、産業界全体が注目している概念です。

安全文化を構成する要素

安全文化は、「経営者が安全にどれだけ注意とコストを払っているか」、「経営者は外部だけでなく、内部の人とのコミュニケーションが取れているか」、「過去の事象を学習しているか」、「全員が積極的に安全にかかわっているか」、「やりがいのある職場か」などの要素から構成されます。部門間で確執があるとコミュニケーションが不足しますし、中堅社員がリストラされると若い社員のモチベーションが落ちます。それらの要因が積み重なると、トラブルも増えます。逆に、一見平穏な状態でも安全文化が低下することもわかっています。

改善するための取り組み

安全文化を醸成するための取り組みとして、まずは組織の安全意識がどの程度の水準なのかを知る必要があります。そのための方法が、アンケートです。社員に組織安全に関する質問を100以上投げかけ、点数化し、ほかの事業所と比べることで、自分の組織の良否が一目瞭然でわかります。
もし、点数が低ければ、さまざまな方法で改善していきます。例えば、管理職の自己評価と部下による評価を比較します。たいていは自己評価よりも部下による評価の方が厳しく、管理職はショックを受けますが、そこで何をすべきかの行動プランを練ります。半年後、再び評価をします。必ずしも全部よくなるわけではありませんが、点数が上がる項目も出てきます。このような取り組みを繰り返すことで安全に関するリーダシップが醸成され、活気のある文化が形成されていくのです。

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慶應義塾大学 大学院システムデザイン・マネジメント研究科  教授 高野 研一 先生

慶應義塾大学 大学院システムデザイン・マネジメント研究科 教授 高野 研一 先生

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経営工学、マネジメント学、組織心理学

メッセージ

どんなに複雑で大規模な先端システムでも、運用するのは人間です。人間は個人と集団で考え方や振る舞いが違ってきます。多くの人が納得し、共有できる価値観に基づき、日頃の行動を冷静沈着に実行していく勇気と知恵が必要です。人間を科学的に探究し、意識や行動が間違った方向に行かないように、柔軟で創造的な「人間」「職場」「組織」をつくり上げていく方法に興味を持ってほしいと思います。

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