「アメ」と「ムチ」のさじ加減で効果が違う環境政策
企業を望ましい方向に導くための環境政策
環境問題は人類共通の課題です。限られた地球の資源を有効に利用する循環型社会の実現や気候変動の原因となる二酸化炭素の削減に反対する人はいないでしょう。ところが、環境問題の原因となっている企業を望ましい方向に導くのは簡単ではありません。政策としては、問題解決に積極的に取り組む企業を補助金などで優遇する方法(アメ)と逆に規制をかける方法(ムチ)があります。ただ、その使い所とさじ加減を誤ると思った効果が得られません。
間接的な影響でも変わる政策の効果
補助金によって環境問題に取り組む企業を優遇すると、補助金が得られるそのような企業は増えるかもしれませんが、以前から環境意識の高かった企業は優遇されません。このような政策が繰り返されると、企業は優遇策が出るまで問題に手をつけない傾向が高まり、自主的に問題解決する企業が減ってしまいます。
一方、企業に負担を求める規制政策が、プラスに働く場合もあります。廃棄物を減らすために容器包装リサイクル法という法律があります。これに基づくリサイクルの仕組みでは、取り扱う容器の素材や重量によって企業に求められる負担が変わってきます。企業は負担を減らすために、より重量が軽く、再利用が簡単な容器を求めるようになりました。その結果、輸送や製造のコストが減少し、企業の収益増大や廃棄物減少だけでなく、輸送による環境負荷の低減にもつながったのです。
環境問題解決を左右する政策の中身
環境問題は、目標は同じでも立場によって意見が異なります。
厳しい規制をかければ、環境NGOは歓迎しても企業から反発されるのは必至です。反発から規制をどう回避するかに企業が努力を集中すれば、本来の目標は見失われます。しかし、弱い規制でも、その政策の中身を考えれば企業の自主性を引き出し、想定以上の効果が得られる場合もあります。政策の良し悪しは、環境問題の解決に大きな影響を与えるのです。
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公立鳥取環境大学 経営学部 経営学科 教授 石川 真澄 先生
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