企業の「当たり前」を大学の学びに生かす
インターネット上の行動は
企業のマーケティング活動において、インターネット上の行動分析は重要です。例えば顧客やユーザーが自社のウェブサイトにアクセスする時間帯や滞在時間、最初の1ページを閲覧しただけで離脱する割合(直帰率)などは、商品の認知や購入につながるデータとして役立ちます。分析に基づいて、集客や購入を促すようなコンテンツの整備や、メルマガやクーポンの送付タイミングの調整といった対策が講じられます。
デジタルの知見を応用すると
こうした、企業では当たり前のノウハウを大学の教育現場に応用する研究が進められようとしています。コロナ禍で急速に普及したオンライン講義では、あらかじめ録画されたオンデマンド講義に学生がアクセスするタイミングや再生回数、問題を解く所要時間といったデータが収集できるようになりました。これらのデータを学生の成績とひも付けることで、「学習態度はまじめなのに、成績が伸び悩んでいる」とか「講義からドロップアウトしてしまい単位が取れない」といった分類や、特徴的な行動の分析を行います。あらかじめ学生の動向を想定して、成績不振や授業から離脱しそうな学生に適切なフォローをすることで、学びの質の向上につながることが期待されます。さらに、コツコツと学びを積み重ねるのが得意な学生には資格取得を案内する、といった学生のキャリアプランの策定に役立てる構想もあります。
潜在ニーズも可視化を
オンライン上だけでなく、学内での学生のリアルな行動データを収集・分析できれば、自習室や食堂などの学内空間の有効活用や、学生生活の満足度向上にもつながります。リアルな行動データからは、アンケートやインタビューといった調査対象に直接質問する「アスキング(Asking)調査」では表れにくい、潜在的なニーズの可視化も期待できます。対象者の同意を得て、個人情報に配慮したデータ処理を行い分析することで、大学のあらゆるステークホルダーに役立つ知見が得られるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
大阪商業大学 総合経営学部 経営学科 准教授 北室 康一 先生
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