微生物が家畜の廃棄物を処理して電気もつくる
畜産廃棄物の課題
宮崎県は畜産業が盛んな地域であり、鶏豚牛の生産量がすべて全国の上位3位に入っています。そこで問題となるのが畜産廃棄物です。現在、県内の産業廃棄物のおよそ7割を畜産廃棄物が占めており、処理に関わる費用や場所に多くの課題を抱えています。畜産廃棄物のほとんどは家畜の排せつ物です。鶏や牛の排せつ物はバイオマス資源や肥料化に利用されるなど、処理が大きな問題にはなっていません。しかし、豚の排せつ物は水分量が多いなどの理由で処理に手間がかかるため、処理が間に合わない事態も起きています。
微生物が発電する
現在は、ばっ気処理として排せつ物に酸素を入れ、微生物による有機物の分解を促進する方法がとられています。しかし、酸素を入れるための動力が必要であり、また臭いが出るために近隣住民からの苦情の元になりかねません。
そこで、発電菌による微生物燃料電池を活用した処理が研究されています。
発電菌という種類の微生物は、人間が酸素を吸って二酸化炭素を吐くように、有機物を食べ電子を排出します。土の中にも、多くの発電菌が生息しています。有機物を含んだ処理物に電極を設置すると、そこにいる発電菌の働きにより有機物を分解処理すると同時に、電子が電極に流れて発電されます。発電菌は酸素に弱い種類が多いので、酸素を送り込む必要はありません。そのため、動力はかからず、また空気で混ぜ返さないうえ、悪臭成分も分解するので臭いも抑えることができます。
微生物燃料電池の可能性
この微生物燃料電池は、うまく設置することで従来のばっ気処理よりも高い処理能力を持つことが証明されています。現段階では電気の出力が微量であるため、発電としてではなく、排水処理方法としての実用化が進んでいます。しかし、デバイス自体の省出力化も進んでいるため、少しでも出力量を上げることができれば、将来は発電としての効果も期待できるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
宮崎大学 農学部 応用生物科学科 准教授 井上 謙吾 先生
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