量子コンピュータの情報処理は確率・統計がカギ
「重ね合わせ状態」を利用する
従来のコンピュータは「電気が流れる/流れない」という状態に1/0を当てはめて情報処理をします。一方、量子コンピュータでは電子、光子など量子の状態(例:電子の自転の方向)に1/0を当てはめます。そして量子力学の領域では、量子の状態は「測定されるまで決まらない」という法則があります。「0でも1でもあり得る」という「重ね合わせ状態」で並列計算できるので、今とは比べ物にならないほどの超高速で計算できる可能性があります。
しかし、そうした特徴があるために、現在のコンピュータとは全く異なる考え方の「量子情報処理」という新しい技術が必要です。量子情報処理では、理論上、通信・暗号化・機械学習など従来のコンピュータと同じことができますが、従来のコンピュータではできない情報処理を行うことをめざして研究が進んでいます。
量子情報処理では確率論が重要
「測定するまで0か1か決まらない」ということは、サイコロを振るのに似て、結果が確率的になるということです。「0の確率が何パーセント」といった具合になるので、コンピュータの計算結果を、確率や統計で表現することになります。
そのため、量子情報処理のアルゴリズム(計算方法)を考える上では、数学の中でも、確率論、統計論が重視されています。こうした研究成果の一つとして、統計学の「漸近(ぜんきん)論」という理論の量子版である「量子統計漸近理論」が作られました。
量子の状態はのぞけない
量子コンピュータ開発は、中の量子状態を確認しながら進める必要があります。そこで注目されているのが「量子推定」です。量子コンピュータの中の量子の状態は、外からはのぞけません。観察したとたんに「重ね合わせ状態」が壊れてしまうので、推測するしかないのです。そこで効率よく、精度よく推測するために、量子推定や量子統計漸近理論を応用することが考えられています。
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