精神の病気を抱えながら働くということ
精神障がい者の就労
働きたいと思う気持ちは、精神障がい者も健常者と同じです。ある女性の例では、精神の病気の治療をしながら、日常生活を整えて居場所づくりを目的とするデイケア施設に10年ほど通っていました。働いていた経験もあったのですが、病気を抱えながら再び働くのは無理だと思い込んでいたのです。就労への意欲がうかがえたことから、障がい者の働く喫茶店での就労支援を行ったところ、継続して働き続けることができて、本人も生きがいを感じています。
働き続けることの難しさ
病院や施設のルールだけで過ごしていると、社会に出ることがイメージしにくくなり、働きたいと思えない、働きたいと言い出せないことがあります。しかし、働いて収入を得て経済的に自立することは、健康な精神に向かう一つの重要な要素です。現在は、障がい者自立支援の事業所のほか、一般企業では障がい者の法定雇用率が制定され、精神障がい者の雇用も進んでいます。
一方で、精神障がい者が就職して1年後には半数が離職するという実態もわかっています。仕事では人と協力し合わなければならないことが多く、そのためには自分の意思を正しく伝え、さまざまなことを周囲と相談する必要があります。多くの精神障がい者には対人関係がうまく築きにくいという傾向があり、協力して働くことがストレスになってしまい、体調や精神状態が悪化して退職せざるを得なくなるのです。
自己評価ツールの開発
そこで、精神障がい者の就労の継続を助ける手段のひとつとして、自分の状態を正しく把握できる「自己評価ツール」の開発が進められています。「誰かに相談できているか」「日常生活が正しく送れているか」「体調が管理できているか」「忘れずに薬を飲んでいるか」などの項目を毎日チェックし、それによって導かれた結果を見ることで状態を把握できるというものです。誰かに相談したい時には、このツールを見せて正確な状態を伝えるという使い方もできるため、コミュニケーションの補助となることも想定されています。
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久留米大学 医学部 看護学科 講師 福浦 善友 先生
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