社会に出て「自立」するためのケアって何だろう?

社会に出て「自立」するためのケアって何だろう?

「施設から出たあと」に目を向けると

児童養護施設は、家庭の事情や虐待などさまざまな背景のある子どもが生活する施設で、「社会全体で子どもを育む」といった社会的養護の考え方に基づいています。18歳になるとそれぞれの状況に応じて自立する必要があり、例えば進学するための奨学金や自立援助ホームなど、支援のための制度は充実してきています。しかし、実際に施設から社会に出てみると、それまでの生活との隔たりや孤独を感じたり、仕事や人間関係が続かなかったりということも起こっています。

生活スキルのケアだけではない

子どもたちにとって施設のとらえ方はさまざまです。自立への不安から長くいたいと思う子もいれば、自由への憧れから早く出たいと思っている子もいます。生育歴や家族との関係もそれぞれあり、安心感や信頼感といった心の土台が築かれていない状況で入所している場合もあります。そのような中で、施設では社会に出て困らないように退所準備としてさまざまなケアが行われています。進路はもちろん、お金の管理や使い方、自炊の仕方など生活に関わることの相談、離れて暮らす家族や思春期の悩みへのケアなど、また、トラウマへの配慮が必要な子どもたちもいます。

関係性の中で育まれる力

自立した生活をしていくためには、施設職員との日常的な関わりの中で、子どもたち自身が自分を見つめ直したり、変わったりしながら「生きていく力」を形成していくことが必要です。例えば、物事の考え方、失敗をした時にどう回復するか、また逆境にどう立ち向かうかといったことは、施設を出たあとの暮らしにもつながっているからです。そのため施設職員は、複雑な思いを抱える子どもたちに対して、どのように強みを引き出して社会に送り出すかという部分で、言葉にならない難しさを抱えながら日々関わっています。
子どもたちを未来志向につなげるためにも、施設だけではなく、学校など関係機関との連携も含めて、今後もさまざまなケアを考えていく必要があるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

久留米大学 人間健康学部 総合子ども学科 教授 玉井 紀子 先生

久留米大学 人間健康学部 総合子ども学科 教授 玉井 紀子 先生

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臨床心理学

メッセージ

私は、「カウンセリング」という言葉や人の行動の意味などに関心を持ったことから、心理学の道に進むことにしました。心理学は高校にない科目なので、大学に入って実際に学ぶと「これも心理学なの?」というようなことが意外にたくさんあります。心理学に関心があるのであれば、自分の未来像を描く意味でも「心理学入門」のような本を読んでみるのは大切だと思います。単に知識をつけるのではなく、専門家やサービスを提供する側になった時の視点をイメージしながらキャリアを考えてみましょう。

久留米大学に関心を持ったあなたは

93年の歴史と伝統を積み重ねた久留米大学には、文学部・人間健康学部・法学部・経済学部・商学部・医学部の6学部13学科、大学院4研究科そして20の研究所・センターなどがあります。「個性尊重、資格取得、地域貢献、国際感覚の育成、高度情報化への対応」を重視し、多くの優秀な教授陣が学生一人ひとりの能力を伸ばしながら、社会への適応力を育み、ゼミナールを中心とした授業で、教員と学生の触れ合いを大切にしています。文系・医系の両キャンパスに新たに教育・研究棟が完成し教育環境もさらに充実しました。