立山から南極まで! 雪と氷の謎を解く
雪氷現象の百貨店
日本国内では現在7つの氷河が確認されており、そのすべてが北アルプス北部の立山周辺にあります。立山は、氷河だけではなく、吹雪や雪崩、永久凍土など多種多様な雪氷現象が一堂に会した、いわば雪氷現象のデパートです。そのため、降る雪の粒の大きさや速度の計測、積雪の状態の観測、永久凍土の調査など、さまざまな雪氷現象の研究が幅広く行われています。
風に舞う雪粒の動きを追う
吹雪の研究もそのひとつです。吹雪とは、雪粒が雪面を跳ねながら空中を舞い、風下へ移動する現象です。吹雪の雪粒の運動を知るために、低温風洞装置というトンネル状の装置を使った実験も行われています。装置の床に敷き詰めた雪を一定の風速で飛ばし、さまざまな条件下での雪粒ひとつひとつの動きを高速ビデオカメラで撮影して、飛ぶ速度や角度を測定して数式化します。その結果、鉛直方向の雪粒の動きがモデル化でき、次の課題として、水平方向の雪粒の動きや、風速が変化したときの雪粒の飛び方などの研究が進められています。
東南極で氷床の質量が増える謎
吹雪の研究フィールドは立山にとどまりません。南極では、温暖化の影響で大陸を覆う氷床が減少傾向にあります。ところが、東方に位置する東南極では反対に氷床の質量が増えており、その原因はまだわかっていません。南極の氷床についての正確な理解は、温暖化による海水面の上昇の予測にも深く関係するため、吹雪の観点からも考察が行われています。
例えば、多量の降雪があったとしても、最終的にどこに積もるのかはよくわかりません。というのも、南極では常に強い風が吹いており、吹雪が発生することで積雪が再配分されます。南極の吹雪を調べるために、新しく設置された観測装置での解析が始まっています。一方、東南極の雪粒には夏に一度とけた痕跡である「氷板」が層になって見られ、おおよそ一年でどの程度に雪が積もったのかがわかります。これらの情報などから、東南極の謎の解明が期待されます。
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先生情報 / 大学情報
富山大学 都市デザイン学部 地球システム科学科 教授 杉浦 幸之助 先生
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地球雪氷学先生への質問
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