コミュニケーションを左右する、重要な要素とは何?
会話はどっちがリードしている?
店に物腰の柔らかい店員と、上から目線の客がいます。2人のコミュニケーションを想像してみてください。客が上の立場から質問や要求をします。店員は丁寧に対応します。一見、客側が売買のやり取りというコミュニケーションをコントロールしているように見えますが、会話の構造を分析してみると、実質的にコミュニケーションをリードしているのは店員側であることが多いのです。印象とは逆のこうしたコミュニケーションは、どのようにして成立するのでしょうか。
コミュニケーションを成立させる要素
2人は客を尊重するという商習慣を共有してはいますが、売買のカギとなる商品知識は店員側が握っています。つまり2人の実際の「人間関係」が、このコミュニケーションを成立させているのです。
社会学では、こうした人間の関係性を切り口に、コミュニケーションのメカニズムを分析します。言葉だけではなく、目には見えない「人間関係」や「立場」という要素がコミュニケーションに与える影響の大きさを知り、その構造を分析することで、今まで無自覚に行っていた会話を客観視できるようになります。それと同時に、コミュニケーションのあり方に一歩深く迫ることができるのです。
心が見えたり、心が見すかされたり
多くの人は、人間の心なんて見えないし、わからないと考えますが、コミュニケーションは心の表出でもあります。相手の話を「明らかに嘘だ!」と感じることがあるでしょう。それは相手の心が見えている状態です。このように心はオープンで、見えるものなのかもしれません。だからこそ注意が必要です。
例えば、裁判で被告人が犯罪の動機(心)をどう語るかで量刑まで変わってくるように、心の表明の仕方で人間関係は良くなったり、悪くなったりします。つまり、心はコミュニケーションを通じて、見えたり見すかされたりしているのです。社会学による分析は、そうしたコミュニケーションの悲喜交々(ひきこもごも)も浮き彫りにするのです。
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先生情報 / 大学情報
追手門学院大学 社会学部 社会学科 教授 足立 重和 先生
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